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クシャダス紀行(4) 行き当たりばったり

2016/03/07 Mon

 やがて前方にイズミルのオトガルが見えてきた。
 オトガル(otogal)とはトルコ語でバスターミナルのことである。
 語源はフランス語で、バスを意味するautoと駅を意味するgareを、トルコ語読みにして綴った合成語らしい。
 フランス語のgareは鉄道駅限定で、バスの駅はla stationと言うようだが、トルコ語では鉄道駅をistasyonと言う。

 オトガルに到着する間際になって、バスの車掌から何やらアナウンスがあった。
 クシャダスが何とか…と言うのだが、その何とかの理解が私のトルコ語の力では及ばない。

 隣の青年に、車掌は何と言ったのかと英語で訊ねる。
 英語が話せる青年で、「このバスの終点はクシャダスです」と言ったのだと教えてもらう。
 青年はイスタンブル大学の学生で、他の二人の学生仲間と一緒にクシャダスに行くのだと言う。

 S氏と私が向かう先はクシャダスなので、それならば、わざわざイズミルでバスを乗り換える必要はない。
 「クシャダスまで乗って行きます」と車掌にトルコ語で告げ、追加料金を訊ねるが、要らないという。

 イスタンブルからイズミルまでは、フェリーの海路も含めると5百km近い距離があるが、バス料金は日本円にして1,700円ほどだ。
 この料金に、車中での諸々のサービスの他、フェリー代も含まれている。
 それでさえ安すぎるほど安いと思うのに、追加料金が要らないとは…。



イズミル市街 (Photo Credit: TARIK GANDUR / Wikimedia Commons CC BY-SA 3.0)


 乗客の大半がイズミルのオトガルで降りて寂しくなったバスで、クシャダスへと向かう。
 イズミルには、クシャダスからの帰りに明日一晩泊まることにしている。

 止んでいた雨がまた降り出してきた。
 イズミルの市街を離れると、再びピンクの花が咲く果樹園を見かけるようになった。
 午前9時、1時間半ほどでクシャダスのオトガルに到着。

 私たちと同様、三人の学生たちもこれから宿を探すと言う。
 一緒にオトガル内の観光案内所を探す。
 案内所はすぐに見つかったがシャッターが開いていない。
 連休とは言え、オフシーズンの午前9時では止むを得まい。

 ホテルの客引きらしい男に声を掛けられる。
 なんとなくうさん臭い感じがしたが、学生たちと2台のタクシーに分乗して、男に付いて行ってみることにする。
 予め宿を予約してこなかったのは、クシャダスは夏の観光地だからこの時期はホテルも暇で、格安で泊まれる良いホテルが簡単に見つかるだろうと思ったからだ。

 男が案内してくれたホテルに着く。
 ホテルというよりは安い民宿といった、古い上に一見して安普請と分かる小さな宿だ。
 中に入って見る気にもなれない。
 三人の学生たちも失望したようだ。
 ここで客引きの男の案内を断ってチップを渡し、乗って来たタクシーの運転手に宿を探してもらうことにする。

 タクシーの運転手が案内してくれたホテルは砂浜に面した三つ星ホテルで、学生たちがフロントに交渉に行く。
 三人相部屋の朝夕2食付きで、一人一泊60米ドルほど。
 泊まることに決めたと言う。
 S氏と私はもう一ランク上のホテルを探すことにして、学生たちと別れる。

 眺望の良い磯と砂浜にまたがった広い敷地に二階建てのフラットが並ぶ、四つ星の大きなリゾートホテルに泊まることにした。
 泳げる季節ではないが、プライベートビーチもある。
 シャワー付きのツインベッド・ルームとバス付きのダブルベッド・ルームにリビングというファミリー向けのスイートで、朝夕2食付き、飲み放題で、一人一泊約70米ドルと安い。
 一夜の宿にはもったいないような居心地の好い部屋だ。

 荷を解き、シャワーを浴びて着替えをし、コーヒーショップで軽く腹ごしらえをしてから、フロントで頼んだタクシーに乗って、ギリシャ文明遺跡の観光にエフェソスへと向かう。

 何もかも予めセットされた旅よりは、臨機応変が求められる行き当たりばったりの旅が好きだ。
 幸運に恵まれることもあれば恵まれないこともある。
 どちらに転ぶかは賭けのようなものだが、恵まれた幸運は永く忘れないものだ。
 幸運に恵まれず厭な思いをしたことも、後になれば、良い経験だったと笑って語れるようになると思っている。

(最終更新日:2016.3.7)



「違憲安保法廃止」、「原発ゼロの日本」を求める超党派の市民運動を応援します。(渡邊むく)

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職業:産業技術英語通訳・翻訳者。男性。俳句歴:2000年より。(主な発信地:神奈川県横須賀市、静岡県御殿場市)

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