BGM: Seashore Silence (by The Green Sun)


スプリンクラー見てをり虹の架かるかと むく

クシャダス紀行(2) クルバンバイラム(生贄祭)

2016/03/04 Fri

 イズミル行きのバスはそぼ降る夜雨の中を出発。
 イスタンブルからイズミルまでの所要時間は約8時間。
 クシャダスへはイズミルから別のバスに乗り継いで行く。

 イスタンブルには寄らずに黒海エレリから真っ直ぐクシャダスへ行く路線もあるのだが、わざわざイスタンブル経由にしたのには理由がある。
 直行バスは十二時間ほどの長旅になって疲れるだろうと思ったことと、大好きなイスタンブルの街を歩きたかったからである。
 西と東の文明の交差点とも言われるイスタンブルは、何十回訪ねても飽きることがない。
 西洋人にとっても東洋人にとってもエキゾチックな魅力に溢れる町…とも言えようか。
 時々、死ぬときはボスポラス海峡を眺めながら逝きたいものだとさえ思う。

 S氏と私以外、バスの乗客は皆トルコ人のようだ。
 ちょうど今日からクルバンバイラム(生贄祭)の四連休に入ったところで、帰省する人も混じって旅行者が多い。

 クルバンバイラムは、ラマザン(絶食期間)明けを祝うシェケルバイラム(砂糖祭)に続いてやってくる、神に感謝の生贄を捧げる祭だ。
 本来は巡礼者による儀式だが、家庭でも、余裕のある者は羊や牛などの動物を一頭買い、生贄として神に捧げる。
 バイラムの初日の朝、神に祈りを捧げてから、家長が動物の喉を掻き切って食肉にするのだ。
 肉は貧しい人たちにも分け与えられる。
 動物は、「正しい羊の屠(はふ)り方」に則って出来るだけ苦しまない方法で喉を掻き切るのだそうだが、見たことはない。

 今日の昼間、S氏と二人で石畳の街を歩いている時に、正しく屠られたらしい羊が皮を剥がれた肉の塊となり、往来に面した軒下にぶら下がっているのを見た。
 大都会イスタンブルでも数少ない、キリスト教の教会がある辺りだった。

 住宅街の狭い路地で、真新しいジャケットを着てネクタイを締め、散髪もしてもらったらしい八、九歳かと思われる優しそうな顔をした少年にも出会った。
 黒くて細い眼をした見慣れない顔つきの私たち二人を眺め回した後、少年はしばらく後をついてきた。
 ポケットから大人たちにもらったご祝儀を取り出し、嬉しそうに私たちに見せる少年。
 日本なら正月のお年玉というところだろうか。
 トルコにもそんな風習があることを初めて知った。

 今年のクルバンバイラムは春だが、イスラム暦による行事なので祭の時期は年ごとに変る。
 日本の正月に似た雰囲気が漂う祭のように思えるのは、今年は春に巡ってきたバイラムだからだろうか。



From
Google Maps

*     *      *


      アジアへと渡る海峡橋朧 /むく

 ボスポラス海峡に架かる近代的な大橋を渡って、バスはイスタンブルのヨーロッパ側市街からアジア側へ。
 タクシムを出発して1時間半ほどで、ペンディクという町に着いた。
 ここからフェリーに乗ってマルマラ海を渡る。

 フェリーの船内では、乗客は車から出ることになっているらしい。
 万一船が転覆したりした場合、甲板の車の中にいては助かる命も助からないからか。

 幸い雨は止む。
 2階の甲板に立つ。
 風の強い船首や船側は避けて、船尾のデッキに。
 航跡が夜目にも白く見えるのと、フェリーにごく近い水面に船の灯が映っているほかは、一面まっ暗闇だ。
 遥か遠くの町の灯も、どれがどこの町やら皆目見当がつかない。

 甲板に出ているのは元気な若者たちで、大方の乗客は冷たい夜風に晒されるのを避け、長椅子が並んだ広い船室内で過ごしている。
 その船室内や甲板の光景をデジカメで撮っていると、若者たちに取り囲まれて質問攻めに遭った。
 トルコではデジカメがまだ珍しい。

 マルマラ海を渡り、フェリーは古都ブルサに近いヤロバという町に着く。
 漆黒の闇の中をバスは再びイズミルを目指す。
 やがて車内の話し声がまばらになり、私も眠りに就いた。

(最終更新日:2016.3.10)



「違憲安保法廃止」、「原発ゼロの日本」を求める超党派の市民運動を応援します。(渡邊むく)

にほんブログ村 ポエムブログ 俳句へ にほんブログ村 写真ブログ 季節・四季写真へ にほんブログ村 写真ブログ 野鳥写真へ
スポンサーサイト

テーマ : 旅行日記
ジャンル : 旅行

コメント

Secret

プロフィール

渡邊むく

Author:渡邊むく
職業:産業技術英語通訳・翻訳者。男性。俳句歴:2000年より。(主な発信地:神奈川県横須賀市、静岡県御殿場市)

最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
最新コメント
リンク
検索フォーム
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR