BGM: Contigo en la Distancia - Chris Botti (Trumpet)


湖を描いてゐる花合歓の下 むく

クシャダス紀行(1) ガン・ストラップ

2016/03/03 Thu

 1999年3月28日。

 イスタンブルの宵。

      春雨やベリーダンスの館出でて /むく

 ホテルのロビーでコンシェルジュに呼んでもらったタクシーに乗り、ウルソイという長距離バス運行会社のバス乗り場に向かう。
 いつもは歩いて行く目と鼻の先のバス乗り場に行くのに、今日に限ってタクシーを呼んでもらったのは雨のせいばかりではない。
 目の前のタクシム広場を歩いて横切りたくなかったからだ。

 タクシム広場では、昨日私たちがイスタンブルに到着した時刻の一時間ほど前に、自爆テロ事件が起きたばかりである。
 そんな時にわざわざ事件があった現場をうろつくことはない。
 いつものことだが、今回の犯行もクルド系の反政府運動グループによるものだと言う。
 なんと憐れなテロリストよ…。

 タクシムは言わば東京の「銀座四丁目」のようなイスタンブルの中心街で、その真ん中にあるタクシム広場は、トルコで最も爆弾テロに遭いやすい場所だと言われている。

 今回の旅の目的地はエーゲ海沿岸の町クシャダス。
 一緒にトルコで仕事をしているS氏との二人旅だ。
 もう一人、Y氏という同僚も合流する予定だったが、出発当日になって急遽都合がつかなくなってしまった。
 Y氏の都合の確認に手間取ったために黒海エレリの町を出発するのが一時間ほど遅れてしまったのだが、今思えばそれは天啓だったかもしれない。
 イスタンブルに早く着いていれば、ちょうど自爆テロが起きた時刻にタクシム広場を歩いていたかもしれない。


タクシム
Free image downloaded from Istanbul Hotel Finder in Turkey.com (Copyrighted)

*     *     *


 タクシムのウルソイ・バスの乗り場も馴染みの場所になった。
 イスタンブルに遊びに来た時は、たいがいウルソイ・バスに乗って帰る。
 黒海エレリ行きのバスは他のバス会社も運行しているのだが、ウルソイ・バスのサービスが一番気に入っている。
 バスはドイツのベンツ製で新しい。
 長距離を走るため、車体の横にはたっぷりと荷物を収納できるトランクルームが付いている。
 座席は勿論リクライニングで、スペースもゆったりしている。
 トイレ、テレビ、ビデオ、オーディオ・ヘッドセット、読書灯と、まるで旅客機並みの娯楽装備もある。
 車掌はよく躾が行き届いた青年で、乗客への対応ぶりも気持がいい。
 車内ではネスカフェ(インスタントコーヒー)、リプトン・ティ、ジュース、水、軽食、朝食、紙のウェットタオルなどをサービスしてくれる。

 ウルソイ・バスのタクシムの乗り場はチケットセンターを兼ねているので、待合室も完備している。
 いつだったか、バスを待っている間に行った洗面室で、四十歳前後の体格のいい男が顔を洗っていることころに遭遇したことがあった。
 男がハンカチを取り出そうとジャケットの胸前をはだけた時、白いYシャツの腋に沿って黒っぽい革製のストラップが覗き見えた。
 即座にガン・ストラップだと察しがついた。
 旅人が護身用に拳銃を持つことは、トルコではそう珍しくもないことのようだ。

(最終更新日:2016.3.10)



「違憲安保法廃止」、「原発ゼロの日本」を求める超党派の市民運動を応援します。(渡邊むく)

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Author:渡邊むく
職業:産業技術英語通訳・翻訳者。男性。俳句歴:2000年より。(主な発信地:神奈川県横須賀市、静岡県御殿場市)

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