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スプリンクラー見てをり虹の架かるかと むく

鶫(つぐみ)

2016/02/05 Fri

ツグミ
つぐみ (散歩道:神奈川県横浜市 2016.2.2)


 ツグミはその繁殖地であるシベリアなどの寒い大陸から、10月頃に日本海を越えて日本に飛来し、春になると繁殖地へ帰ってゆく渡り鳥です。
 冬季を日本で過ごす冬鳥ですが、飛来する時期が晩秋であることから俳句歳時記では秋の季語とされています。

 その歳時記で「鶫」の派生季語を見ていてギョッとしました。
 「鶫焼く」、「鶫食う」、「焼鶫」といった季語があったからです。
 ショックでした。

      兄弟や祖父にならひし鶫罠 /中尾白雨(1909-1936)
      つぐみ罠畑の巌にも餌をすこし /飯田蛇笏(1885-1962)
      罠のへにたちどまりたる鶫かな /飯田蛇笏

 むかしはそうだった…つまり、私たちはそういう時代を経てきたんですね。

 つぐみ罠とは「かすみ網」のことでしょうか。
 今では使用が禁止されています。
 蛇笏句は一句めと二句めではちょっと質に違いがあるような。

      はづし来し鶫の羽の濡れゐたる /岡田耿陽(1897-1985)

 かすみ網にかかった鶫と想像します。

      捕鳥場へ瓔珞落ちの鶫かな /松藤夏山(1890-1936)

 捕鳥場とは、かすみ網を張るのに邪魔になる木を伐ったりして、鳥を捕まえやすいようにした場所なのでしょう。
 そういう場所のことを鳥屋(とや)と言ったりもします。
 鳥屋は地名として今でも残ってもいたりするのではないでしょうか。

      袂より鶫とりだす鳥屋師かな /大橋櫻坡子(1895-1971)
      毛むしりて細首に成るつぐみ哉 /松瀬青々(1869-1937)
      鶫鍋とりし自在のはね上る /森田愛子(1917-1947)
      十月や鶫炙ればこの脂 /野村喜舟(1886-1983)
      炉塞や鶫の脂舌頭に / 野村喜舟
      宿の子と鶫焼く爐をかこみつゝ /石橋辰之助(1909-1948)
      鶫茶屋火を落しゐるところなり /吉岡禅寺洞(1889-1961)
      口中に鶫の一肢ひびくなり /清水径子(1911-2005)
      鶫焼き夜風荒るるに任せたり /大串章(1937-)
      焼鶫仰天の目を瞠りたる /橋本鶏二(1907-1990)

 石田波郷も「鶫は冬が美味」と称賛したそうです。
 鶫に対する同情が感じられる橋本鶏二の句は、今の時代の人の感覚に近いでしょうか。

 そういえば「焼鳥」を冬の季語としている歳時記もあります。

 掲句の多くは今の時代の愛鳥精神からは外れています。
 しかし、それらの句が詠まれた時代には「鶫を食べる」ことが一般的なことだったのです。
 戦争によって悪化した食糧事情を反映している句もあるように思います。
 もって、これらの句を詠んだ俳人たちを野蛮だなどとは思わないでください。

 ところで、いまでも野鳥の密漁は後を絶たないと聞きます。
 かすみ網は、所持、使用、販売することが法律で禁止されています。
 もしそのような不心得な人を見かけたら警察に通報しましょう。
 野鳥は環境の健全性を測るバロメーターとも言われます。

 春はその鶫が帰る「鶫引く」季節。
 春一番が吹き荒れる頃でしょうか。

       風に向かい風に流され鶫引く /むく



「違憲安保法廃止」、「原発ゼロの日本」を求める超党派の市民運動を応援します。(渡邊むく)

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テーマ : 詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など
ジャンル : 学問・文化・芸術

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焼き鳥

焼き鳥と言えば現在は『鶏肉』ですが・・昔は『ツグミや雀』が主であったようです。・・ツグミが集団で渡ってくるのをカスミ網で捕獲して焼き鳥にしたようですね。野鳥を捕えて職業にしていた人が多くいましたからね。
目白やホオジロは籠鳥として鳴き声を競い・・横綱・横関と・格付けして売買し暴力団の資金になっていたようです。厳しく取り締まっても・・今もって行われているのかもしれませんね。小鳥が害虫を食べる量は計り知れません。森の木を守ることは・・私たち人間を守ることですね。見つけたら警察に通報しましょう。

Re: 焼き鳥

でんどう三輪車さま

> 焼き鳥と言えば現在は『鶏肉』ですが・・昔は『ツグミや雀』が主であったようです。・・ツグミが集団で渡ってくるのをカスミ網で捕獲して焼き鳥にしたようですね。野鳥を捕えて職業にしていた人が多くいましたからね。
鳥屋の禁止令が出されたのは昭和21、22年頃のことで、GHQ関係者が残酷だとして禁止させたとのこと。
かすみ網はその延長として、その後規制が強められていったのだろうと思います。
私が子供の頃、かすみ網を網を張っている景を見たことはありますが、既に規制を受けていたのでしょう。
「隠れてやっている」後ろめたい空気がはっきり漂っていた記憶があります。

> 目白やホオジロは籠鳥として鳴き声を競い・・横綱・横関と・格付けして売買し暴力団の資金になっていたようです。厳しく取り締まっても・・今もって行われているのかもしれませんね。小鳥が害虫を食べる量は計り知れません。森の木を守ることは・・私たち人間を守ることですね。見つけたら警察に通報しましょう。
メジロの鳴き合わせは今でも密かに行われているようですね。
メジロは飼うことも禁止されていますが、輸入メジロは規制の対象外だとか。
先日、メジロをよく飼っていたという方に偶然にお会いしました。
「抜け道があるんだよ、輸入証明書があれば飼えるんだ」と教えていただきました。
ペットショップによっては証明書だけを販売しているところもあるようです。
それに対抗する国産メジロか外来かの識別法もあるようです。

コメントありがとうございます。
プロフィール

渡邊むく

Author:渡邊むく
職業:産業技術英語通訳・翻訳者。男性。俳句歴:2000年より。(主な発信地:神奈川県横須賀市、静岡県御殿場市)

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