BGM: Send in The Clowns - Arve Tellefsen (Violin)


切り札を最後に使ひ花吹雪 むく

秀句鑑賞-秋の季語:初秋刀魚(はつさんま)

2016/01/12 Tue

January 12 2016

初秋刀魚買ふ気で覗く陶器市  丸山きよ子

(はつさんま かうきでのぞくとうきいち)



 初さんまの季節。作者が買う気になったのは秋刀魚皿。住空間の制約が大きい都会で暮す主婦にとって、さんまの塩焼きだけのためにわざわざ皿を買うのは、決心が要ることに違いない。幅は狭いのに長さだけは図抜けて長い秋刀魚皿は、食器棚に横向きに入れても縦向きに入れても邪魔になるからだ。
 その秋刀魚皿を買う決心を作者はしたのかどうか。本気で買おうと思って陶器市を覗いた…だけかもしれない。
 掲句にいたく共感したのは、その秋刀魚皿が我が家にはあるからである。家内には買う気がなさそうだと見限って、私が自分で買ってきたものだ。その皿を引っ張り出して、さんまを焼いて食う。大抵は一年に一、二回だが、それでも焼さんまは秋刀魚皿で食いたいのが男。忙しい主婦は、台所を万事合理的に切り回したい。
 都会の焼さんまは、すでに腸(はらわた)を取り一匹を頭の方と尾っぽの方に二分した魚を買ってきて焼くのが標準になりつつあると聞く。世の変化への感慨も湧いてくる庶民目線の佳句。

 (渡邊むく)



 【丸山きよ子:東京都在住。『月刊俳句界』2016年1月号より。】
 丸山きよ子(おたま)さんのブログ: おたまおばさんの谷中・根津・千駄木散歩



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テーマ : 詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など
ジャンル : 学問・文化・芸術

コメント

Secret

ありがとうございます

むく様、身に余るほどの観賞ありがとうございます。

お盆の頃、陶器市を覗きました。
何度も秋刀魚用のお皿の前を行ったり来たり・・・。
結局、女の心が勝ち買いませんでした(笑)。

> 世の変化への感慨も湧いてくる庶民目線の佳句。

たまたま陶器市に出かけて秋刀魚用のお皿を見つけたことを俳句にしたまでですが、この観賞にいたく感動いたしました。
おたまの手を離れた俳句が、知らず知らずのうちに現代の住環境・食環境問題までに発展させて頂きました。

このように観賞して頂くと、拙句が秀逸句のように見えてきました。
ありがとうございました。

Re: ありがとうございます

おたまさま

> たまたま陶器市に出かけて秋刀魚用のお皿を見つけたことを俳句にしたまでですが、この観賞にいたく感動いたしました。
> おたまの手を離れた俳句が、知らず知らずのうちに現代の住環境・食環境問題までに発展させて頂きました。
勝手な鑑賞文ですが、気に入っていただけてよかった^^
スッと心に入った俳句からは、いろいろな想像が拓けますね。
御句はまさにそういう句でした。
似たような体験があったからよく理解できたのだと思います。
立派に秀逸句です^^
プロフィール

渡邊むく

Author:渡邊むく
職業:産業技術英語通訳・翻訳者。男性。俳句歴:2000年より。(主な発信地:神奈川県横須賀市、静岡県御殿場市)

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