富士初雪落葉松の大金屏風

初蝉(はつぜみ)

2015/07/15 Wed


2015.7.10  桟橋 (城ヶ島:神奈川県三浦市)


 梅雨が明けたかな…と思うように晴れ上がった朝。
 どこへ行こうか…と、コーヒーを飲みながらガンコチャンと相談。
 城ケ島まで足を伸ばしてみることに。
 朝食はパンにして、炊いたご飯はおむすびに。

 城ヶ島は一昨年の夏以来。



2015.7.10  城ヶ島大橋と北原白秋の詩碑 (城ヶ島:神奈川県三浦市)


 城ヶ島大橋を渡って、白秋記念館に近い無料駐車場へ。
 来る途中で若山牧水にゆかりの長沢海岸に立ち寄ってきたせいか、白秋記念館も訪ねてみたくなりました。

 案内板に従って咲き名残る紫陽花の径を進むと、城ヶ島大橋の真下に近い場所に小さな記念館が。
 記念館の目の前の船着き場の一角には 「城ケ島の雨」の歌碑が。


     雨は降る降る 城ケ島の磯に
     利久鼠の 雨がふる
     雨は真珠か 夜明けの霧か
     それとも私の 忍び泣き

     舟はゆくゆく 通り矢のはなを
     濡れて帆あげた ぬしの舟

     ええ 舟は櫓でやる  櫓は唄でやる
     唄は船頭さんの 心意気

     雨はふるふる 日はうす曇る
     舟はゆくゆく 帆がかすむ


 島村抱月が作詞を依頼したというこの「城ケ島の雨」が作られたのは大正4年。
 橋を挟んで瀬戸の向こう側になる三崎の町に白秋が暮らしていた頃のことです。
 暮らした期間こそ一年足らずと短かったものの、白秋は三崎と城ケ島を終生愛し続けたようです。

 三崎時代の短歌が収められた白秋の歌集 「雲母集」。
 私の好きな歌集ではありませんが、その後記である「雲母集余言」に白秋が書いた一文は、当時の様子をよく伝えているのでここに引用しておきたいと思います。


  「一心敬礼して此雲母集一巻を世に公にせむとするに当り、今更に覚ゆるは虔(つつ)ましい懺悔の涙である。
 一入(ひとしお)にまた痛ましきは切々として新たなる流離の悲みである。
 光悦身に余りながら私はなほ自身の救ふ可(べか)らざる痴愚を感ずる。
 私は少くとも不純であつた。
 今こそ私は目醒めて茲(ここ)に謙譲の筆を執る、真実は私の所念である。(略)

 相州の三浦三崎は三浦半島の尖端に在つて、遥かに房州の館山をのぞみ、両々相対して、而(しか)も貴重なる東京湾口を扼(やく)してゐる、風光明媚の一漁村である。
 気候温和にして四時(しじ)南風やはらかく而も海は恍惚として常によろめいてゐる、さながら南以太利の沿岸を思はせる景勝の土地である。

 私等の新居はこの三崎の向ヶ崎の浜にあつた。
 時俗(じぞく)呼んで今も向ヶ崎の異人館と云ふのがそれである。
 この家はもと長崎の領事をしてゐた老仏蘭西人がその洋妾(らしゃめん)と暫らく隠棲してゐた一構で、当時はその洋妾の所有になつてゐたのである。
 西洋式の庭は海に面して広く、一面に青芝が生へ、鍵形(かぎなり)になつた石の胸壁の正面には石段があり、桟橋があり、下には一艘の短艇ボートが波にゆられてゐた。
 家屋は日本風であるが海に向つて開いた玄関、廊下、翼家(はなれ)の欄間には流石に紅や黄の窓硝子が箝(は)められ、庭の隅々にはまた紅い松葉菊を咲かしてあるといふ風に、如何にも異国趣味の瀟洒(しょうしゃ)な住宅であつた。
 海は又どの室からも見えた。
 而して前には城ヶ島の緑が横たはり、通り矢とその間の五丁にも足らぬ海峡を小蒸汽(こじょうき)が来、渡海船(とかいせん)が通り、余多(あまた)の漁舟が漕ぎつれて行く、而して遠くは煙霞(えんか)の間に房州の山をのぞみ、欧洲航路の汽船軍艦はいつも煙を曳いてこの眺望の中を消えて行つたなど、全く明快な近代劇の舞台面(ぶたいおもて)であつた。」(以下略)

      青空文庫より)

 深い苦悩を背負って三崎に移り住んだこと、三崎での暮しが大きな転機になったことが偲ばれる一文です。
 白秋が住んだ異人館は現存していません。



2015.7.10  にいにい蝉 (城ヶ島:神奈川県三浦市)



     通り矢の鼻を望みて濃あじさい


     初蝉の聞こえて閑か城ケ島


     通り矢の鼻にて加速かつお船


 記念館に投句箱があったので、即吟して2句投句。


2015.7.10  通り矢の鼻 (城ヶ島:神奈川県三浦市)



2015.7.10  館山方面 (城ヶ島:神奈川県三浦市)



     白秋の歌など唱う避暑の夜 /むく


 コミセンの音楽室を借りて、"城ヶ島の雨"のほか、お好きだと聞いていたシャンソン、往年の名画「カサブランカ」の主題歌"As Time Goes By"などを何度も練習し、ご招待のお礼にとちょっと値の張るワインなども買い込んでお邪魔した別荘。

 喜んでいただけるかと、ガンコちゃんのキーボードの伴奏で歌ったものの、期待した反応がないので「??」。
 その後、ピアノの譜面、キーボード、果てはドラムセットまで「買ってきて」という依頼が相次ぐことになりました。
 ご自分でもたくさん音楽をおやりになった方なので、聴いているうちに演奏したくなったのでしょうね。

 いろいろとお世話になった方でしたが、先日お亡くなりに。
 改めてご冥福をお祈りします。(合掌)




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テーマ : 詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など
ジャンル : 学問・文化・芸術

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渡邊むく

Author:渡邊むく
職業:産業技術英語通訳・翻訳者。男性。岩手県生まれ宮城県育ち。俳句歴:2000年より。主な発信地:神奈川県横須賀市、静岡県御殿場市。

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