BGM: Seashore Silence (by The Green Sun)


スプリンクラー見てをり虹の架かるかと むく

梅見茶屋(うめみぢゃや)

2015/03/21 Sat


2015.3.18 春惜しむ (円覚寺:神奈川県鎌倉市)

 2015年3月20日筆。

 … ねえ きょう まだ おやつたべてないよ。

 「食べたじゃない。
 ほら、いちごプリンを。」

 … た・べ・た。

 … ねえ いいこと おもいついたよ。

 「ん、なーに?」



2015.3.18 河津桜 (円覚寺:神奈川県鎌倉市)


     梅見茶屋思いがけなく護符一つ /むく


 昨日日記を書いた時に句を添えられればよかったのですが…。

 この句の推敲の過程を種明かししたいと思います。
 私のレベルの低さをさらけ出すようで恥かしいのですが、これから俳句を詠んでみたいという方に多少の参考になれば、と。

 円覚寺の甘酒茶屋で腰を下ろしながら最初に句帳にメモしたのは…

     1. お守りを一ついただく春の茶屋

 茶屋では甘酒を飲んだのですが、「甘酒」は夏の季語なので入れずに、季節と場所を表すために「春の茶屋」としました。
 また、句の眼目は茶屋でお守りをいただいたということで、何を食べたか飲んだではないので、「甘酒」はむしろ主眼を隠してしまう邪魔になります。
 …と、そこまではいいのですが、この句だと、まるで、お守りを食べようとしているか、あるいは、お守りをもらうために茶屋へ行ったかのようですね。
 そこでメモ帳に…

     2. お守りも盆に載せあり春の茶屋
 
 …と。
 1の懸念はなくなりましたが、意味が不鮮明で、まったりし過ぎか、と。
 そこでメモ帳に…。

     3. 護符ひとつ添えられており春の茶屋

 「お守り」は平易な言葉ですが、「護符」としたほうが男らしい…かと。
 しかし、2の不鮮明さ、まったり感は解消されないまま。
 原因は「添えられており」にあるようです。
 2の句の「載せあり」と大差なく、動詞が二つ並んでいるようなまどろっこしさがあります。
 言葉を無駄に使っています。
 17音の俳句の中では、言葉を無駄に使ってはなりません。

 …が、茶屋でメモしたのはここまで。

 今朝、通勤電車の中で句帳を開いて更に推敲。

     4.護符ひとつ添えてもてなす春の茶屋

 甘酒とお茶に護符も添えてくださった心づくしに感動したことが、これまでの句でははっきりと伝わらないと思って、「もてなす」と推敲してみました。
 しかし、「添える」、「もてなす」と、動詞が2つあるのは問題です。
 そこで…

     5.護符ひとつ添えるもてなし春の茶屋

 …としてみました。
 「もてなす」を「もてなし」と名詞に変えることで、動詞の問題は収まりがついたようです。

 しかし、問題は他にもありました。
 「もてなし」は、「心づくし」と同様に、それを受けた自分が感じたこと、つまり「感動したこと」です。
 「感動したよ」と言っているのと同じです。
 それではダメなんですね。
 「答え」を言っているのと同じで、余韻がなくなってしまうからです。
 読み手にしてみれば、結末を先に知って推理小説を読むようなものです。
 「感動したよ」、「あ、そう」で終わってしまいます。
 「もてなし」や「心づくし」は、句を詠む上では、それを言葉にした途端に価値がなくなってしまいます。

 そこで、 「思いがけなかった」という事実だけを詠むことに。

     5. 春の茶屋思いがけなく護符一つ

 後日、「春の茶屋」を「梅見茶屋」と更に推敲して、冒頭の句に落ち着けたという次第です。
 佳い句という訳ではありませんが、私が俳句を詠む時のプロセスの一例としてご紹介してみました。

 ついでに、俳句における動詞の話を少し…。

 動詞を使わずに景が鮮明で、意味も明確、かつ余韻が深い句を詠めれば、それにこしたことはありません。
 一つ例を挙げると、「菜の花や月は東に日は西に」という蕪村の有名な句があります。
 上五の「菜の花や」の「や」は、感動や詠嘆を表す感嘆符のような役割をする「切れ字」と呼ばれもので、そこに一句の切れ目(区切り)が生れることになります。
 「菜の花が咲いているなぁ」という意味になります。
 中七、下五はその菜の花が咲いている景色を「東空に月が昇りはじめ、西空に日が沈もうとしている中で」と補足している訳です。

 こうして、夕日(既に残照かもしれません)と月の出と菜の花だけの大景が広がってくる、見事な仕掛けが完成。
 すごいですね。
 上の説明でアンダーラインを引いたところは、句の意味を説明するために敢えて入れてみた動詞ですが、動詞を使わないといかに景がすっきりするか、説明はないほうが余韻が深くなる、ということがお分かりいただけるのではないでしょうか。

 初学の頃に
Yukukoさんに教えていただいた「動詞は使っても一つ」を肝に銘じて俳句を詠んでいます。

 「や」の他に、「かな」、「けり」も切れ字と呼ばれます。
 「かな」は句の最後に置かれる切れ字です。
 最後に区切りがあるというのはおかしく思われるかもしれませんが、この場合は区切りというより、感嘆符だと思えば理解しやすいでしょう。

 切れ字は多用すべきものではありません。
 切れ字を使ったからと言って即俳句であるという訳ではありません。
 大事なのは「切れ」、「余韻」であって、「切れ字」はそのための手段の一つに過ぎません。
 しかも、歴史的には十分過ぎるほど古い。

 俳句を詠む人のことを揶揄して「やかな屋さん」と言うそうです。
 できるだけ切れ字の使用を我慢して切れのある句、余韻の深い句を詠む姿勢が、特に現代においては大事、と私は考えています。
 過去の郷愁に向かうことがダメとまでは言いませんが、正しい言葉を使いながらも未来を見据えて俳句を詠まなくては、俳句が滅びてしまうと思うからです。

 最後に今日の一句。



     昼の膳手もとの映る春障子 /むく


 こんなお店でした。


2015.3.20 パンフレット


 上の句は墨書してモデルになった方へ。
 仲居さんには、和紙風のコースターに「お前さんも相当頑固石蕗の花」の句を墨書して。

 仲居さんからは、 「今度はぜひ、そのガンコ奥様もご一緒に」と。




にほんブログ村 ポエムブログ 俳句へ にほんブログ村 写真ブログ 季節・四季写真へ
スポンサーサイト

テーマ : 詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など
ジャンル : 学問・文化・芸術

コメント

Secret

お早う御座います。

推敲の過程が順次に解り
大変参考になりました。

やかな屋さんのりまどです。v-8
気を付けたいです。有難う御座いました。v-398

いつもありがとうございます

むく様、いつも的確な指導ありがとうございます。
この推敲課程見習って、今後は、推敲も大切にしていきたいと思わされた瞬間です。


「緋桜」の句、とても素敵です。
おたまは、母父句に弱いのですが、日曜の朝から御句には泣かされました。。。


もうひとつ、入彼岸の句。
色気もあって、真似させて頂きたいと思いました。
写真も、控えめに道行が写っていて写真との取り合わせも勉強させて頂きました。

No title

推敲の流れ、動詞、切れ字など
初心者の私には大変勉強になりました。
写真も句のイメージを伝えるのに重要ですね。

もてなし

ご指導 承り 勉強になります。
気付かない ことを知り
改めて 勉強です。
そして 句に興味を抱いております。
いつも有り難うございます。











ご指導を承り
気付かないことを知り改めて
勉強です。
そして 句に興味を抱くようになりました。
有り難うございます。

Re: お早う御座います。

> 推敲の過程が順次に解り
> 大変参考になりました。
おはずかしいv-15

> やかな屋さんのりまどです。v-8
> 気を付けたいです。有難う御座いました。v-398
俳句界4月号には御句が4句も掲載!

 聞き役に徹していたる榾火かな
 声弾む母と並びて障子貼る
 ひもすがら風の鵡川や柳葉魚干す
 小春日や本を開けば眠くなり

どれも佳いお句ですね。
私は1の句が特に好きです。
榾をくべながら話の聞き役に徹している人、お父様の姿か。。。

Re: いつもありがとうございます

> むく様、いつも的確な指導ありがとうございます。
こちらこそ。
おたまさんの熱心さに大いに啓発されています。

> この推敲課程見習って、今後は、推敲も大切にしていきたいと思わされた瞬間です。
私の思考回路を白日の下に(笑。
俳句の作り方は人によってさまざまあると思いますので、「一つ」の参考程度に。

> 「緋桜」の句、とても素敵です。
> おたまは、母父句に弱いのですが、日曜の朝から御句には泣かされました。。。
ありがとうございます。
ストレート過ぎるかもしれませんが、時にはそんな日も。

> もうひとつ、入彼岸の句。
> 色気もあって、真似させて頂きたいと思いました。
> 写真も、控えめに道行が写っていて写真との取り合わせも勉強させて頂きました。
写真は使わないのが俳句の本道だと思っています。
でも、ブログでは、あまり殺風景なのもせっかくご覧下さる方に対して…ということで、「まずはお茶でも一服」の挨拶として。
主役はあくまでも俳句と。

こうめさま

> 推敲の流れ、動詞、切れ字など
> 初心者の私には大変勉強になりました。
> 写真も句のイメージを伝えるのに重要ですね。
ありがとうございます。
他に誰かが詠んだような俳句ばかりではつまらないですよね。
俳句の作り方、詠み方は百人百様でしかるべきで、個性は大事なことだと思います。
そして、その個性は長年詠み続けたものを振り返ると、自然にそこに顕れているものだとも。
ただ、人さまの「共感に訴える」ためには、そのための詠み方をすることが必要だということだと思います。
作句法について書かれたいろいろな先生方の本がありますが、基本が大きく違うことはないはずです。
ぜひ一書を。
私が読んだ中では、鷹羽狩行氏の入門解説書などがお薦めです。

Re: もてなし

トマトの夢3さま

> ご指導 承り 勉強になります。
指導だなんて、恥ずかしい限りです。
まだまだ勉強中です。
書くことは、考えていることの自己確認でもあるので。

> 気付かない ことを知り
> 改めて 勉強です。
> そして 句に興味を抱いております。
俳句に興味を持っていただけたら、こんなに嬉しいことはありません。
歳時記の選び方をはじめ、お手伝いできることがあれば、何なりとお申し付けください。
楽しみです♪
プロフィール

渡邊むく

Author:渡邊むく
職業:産業技術英語通訳・翻訳者。男性。俳句歴:2000年より。(主な発信地:神奈川県横須賀市、静岡県御殿場市)

最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
最新コメント
リンク
検索フォーム
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR