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航跡もイルカの群も夕焼ける

甲虫(かぶとむし)

2020/07/10 Fri


    かぶとむし薄毛の頭に止まりけり

        (かぶとむし うすげのつむにとまりけり)






    かぶとむし森へと返す朝まだき /むく

        (かぶとむしもりへとかえす あさまだき)







 アオゲラ (2019.06.27 山中湖村:山梨県)


  カブトムシ Part-2

 ぼんやりと目が覚めると何か音が聞こえる。
 一つは除湿器の作動音だ。
 点けっぱなしで押入の前に置いて寝た。
 気になったのはもう一つの音。
 ガリガリと何かがうごめいている音。
 私が寝ている和室の中らしい。

 部屋の灯を点けると、畳の上にカブトムシが居た。
 リビングの窓のそばに置いた段ボールの箱から這い出て来たらしい。
 戸襖を開けたまま寝たので、カーペットを這ってリビングを横切り、寝室に入ってきたらしい。
 布団の足元のほうの畳の上で、しっかりと角を立て、四肢…いや前足、中足、後足を踏ん張っていた。
 元気そうだ。

 私を起こしにきたのか?
 時計を見ると午前四時の少し手前。
 森に帰りたいのか?
 まだ寒いよ。
 私の蒲団に潜り込みに来たのかな?

 カブトムシを段ボール箱の中に戻した。
 が、すぐに翅から唸りを上げて段ボール箱から飛び出した。
 これだけ元気なら森に帰れるかもしれない…と思った。

 窓を開けてカブトムシをバルコニーの床の上に置いた。
 が、バルコニーに置いてある私のサンダルの下に潜り込もうとする。
 飛び立つ様子がない。
 仕方ない、手伝うことにするか…と、私もバルコニーに出ることにした。

 サンダルを履くとカブトムシがズボンの裾にしがみ付いた。
 温度計を覗くと外気温は18℃。
 森に帰るにはまだ寒過ぎるか。

 ズボンを這い上がったカブトムシがシャツの背中に回り、やがて首筋まで達した。
 頭まで上るつもりかな?

 首を引っ込めると、シャツのカラーと頭との距離が詰まった。
 すかさずカブトムシが頭部に移った。
 髪がゴソゴソする。
 こそばゆい。
 カブトムシはついに頭の天辺まで上った。

 指を角に挟まれないように気を付けながら、頭の上に手をやった。
 指が触れたその瞬間、カブトムシが飛び立った。
 辺りに視線を走らせるが、どこにもカブトムシの姿が見えない。
 目の前の木立のどれかの葉に乗ったか。

 ・・・元気でな。
 最後はあっけない別れだった。
 いや、どんな別れも最後はあっけないものなのだろう。

 おそらくは助かるまいと思いながらも介抱?した二日間。
 地上に出た後のカブトムシの命は短い。
 精一杯輝いて生きて欲しい。

 今夜はカブトムシの快気祝い♪



 アオゲラ (2019.07.05 山中湖村:山梨県)


 (2020年7月10日 山中湖にて)


 ご訪問ありがとうございました。


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テーマ : 詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など
ジャンル : 学問・文化・芸術

コメント

Secret

こんにちは!

いよいよ転居が近くなり、お別れのあいさつに来たカブトムシ君。スキンシップを最後に飛び立っていったのでしょうね。転居が間近くなってお別れが続きますね。

ほっこり

こんばんは。

カブトムシ君の思わずホッコリする物語ですね。
むくさんの温かな視線と文章のせいでしょうか。
小さな幸せの時間をいただけたことに感謝です。

Re: こんにちは!

素姓乱雑さま

> いよいよ転居が近くなり、お別れのあいさつに来たカブトムシ君。
> スキンシップを最後に飛び立っていったのでしょうね。

貴重な体験をしました^^
カブトムシがいなくなって、まだ魂が抜けたような気分が続いています(笑。

> 転居が間近くなってお別れが続きますね。

生者必滅、会者定離ではありますが。
中でも間近な富士山をいつでもは見られなくなる喪失感が一番大きいかと思っています。
山頂まで10kmの富士山の威容を観る喜びは例えようのないものがあります。

秦野の転居先からはその距離が5倍ほどになり、丹沢の山越しに見ることになります。
これからも間近な富士山を観に度々来ることにはなろうかと思います。

コメントありがとうございました。

Re: ほっこり

リキさま

> カブトムシ君の思わずホッコリする物語ですね。
> むくさんの温かな視線と文章のせいでしょうか。
> 小さな幸せの時間をいただけたことに感謝です。

こちらこそ、温かいメッセージをありがとうございます。
気温の低い山中湖ではカブトムシの成虫が発生するのも遅いようです。
このところの天候不順も考えると、地上に現れはしたものの気温が低過ぎて元気がなくなっていたようにも思われます。
何となくそれに気付いてすぐに室内に入れたことは良かった、と思っています。

コメントありがとうございました。

No title

鳥、虫、花、富士を望む風景。
おかげさまで山中湖の風物をたっぷり楽しませていただきました。引っ越しは何かと大変だと思いますが、お疲れのでませんように。

Re: No title

taracyannさま

> 鳥、虫、花、富士を望む風景。
> おかげさまで山中湖の風物をたっぷり楽しませていただきました。
> 引っ越しは何かと大変だと思いますが、お疲れのでませんように。

温かいメッセージありがとうございます。
じっくり腰を落ち着けて楽しむことの出来た2年余りだったと思っています。
寂しい面もありますが、新しいものに向かって進まなくてはと一つの区切りを打つことにしました。
まだまだこれからだと思っています^^

コメントありがとうございました。

こんにちは♪

カブトムシ物語・・とても心温まるお話でした。
むくさんのお部屋に入って来たのはお礼のつもり?
よじ登って頭から飛び立つなんて、なかなかやるじゃないですか^^
18℃は寒いけど残りの命精いっぱい生きて欲しいですね。

※ギボウシのお話もありがとうございました。
私はねぇ、ホスタという呼び方はイマイチしっくりこなくて・・頑なにギボウシと呼んでいます^^

Re: こんにちは♪

miyakoさま

> カブトムシ物語・・とても心温まるお話でした。

ありがとうございます^^

> むくさんのお部屋に入って来たのはお礼のつもり?

手前勝手ですが、そんふうに思いました。
お礼というか、暇乞いのように(笑。

> よじ登って頭から飛び立つなんて、なかなかやるじゃないですか^^

もうメロメロになりました^^

> 18℃は寒いけど残りの命精いっぱい生きて欲しいですね。

はい、そう信じています。

> ※ギボウシのお話もありがとうございました。
> 私はねぇ、ホスタという呼び方はイマイチしっくりこなくて・・頑なにギボウシと呼んでいます^^

わたしもゼッタイに擬宝珠ですっ。
外国でもgiboshiと呼ばれることがあるようです^^

雨が降らなければ明日また探しに行ってみたいと思います。
少し標高が高いところなので、まだ早いかなぁ、とも思いますが。

コメントありがとうございました。
プロフィール

渡邊むく

Author:渡邊むく
男性。岩手県生まれ宮城県育ち。商社勤務、産業技術英語通訳・翻訳者を経て現在はほぼ引退。愛妻ガンコちゃんと二人暮らし。引越し回数二十六回。現在の主な発信地は東京へも富士山へも約70kmの神奈川県秦野市。俳句は2000年から。リンクはどうぞご自由に。

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