渡邊むく俳句ブログ~まあおたいらに~渡邊むく俳句ブログ~まあおたいらに~ 三尺寝
FC2ブログ
航跡もイルカの群も夕焼ける

三尺寝

2020/07/04 Sat


    窓庇涅槃仏めく三尺寝

        (まどびさし ねはんぶつめくさんじゃくね)






    トラックの下に潜るや三尺寝 /むく

        (とらっくのしたにもぐるや さんじゃくね)




 追記: 二句を追加(2020.07.05)


 沙羅の花 (2019.6.20 山中湖村:山梨県)


  三尺寝

 句はインドで。
 二〇〇五年の詠。

 「三尺寝」とは、身体を折るようにして狭いところで寝ること。
 インドではいたるところで目にする光景。
 インド人の特技かもしれない。

 日本の駅のホームで三尺寝をしたというトルコの友人がいる。

 私がトルコでお会いしたときのメテ・トゥンジョク(Ahmet Mete Tunçoku)さんは、当時アンカラの「中東工科大学」(Middle East Technical University)の教授で、国際政治学を教えておられた。
 メテさんは若き日にトルコの国費留学生として京都大学で大学院と併せて八年間学ばれた経験を持ち、学究一筋の道を歩まれた碩学である。
 東大の客員教授、京大の教授も務め、日本人学生に日中近代外交史などを教えられた。
 著書の一つ『トルコと日本の近代化 - 外国人の役割』は、京都大学大学院生だったメテさんが日本語で書いた博士論文を、後日出版(1996年:サイマル出版会)したものである。

 トルコで最も親しかった私の友人ヴェリは、中東工科大学に日本語クラスが開設された頃、メテさんの最初の教え子の一人になった。
 雪の積もったある冬の日、そのヴェリと中東工科大学の教授室にメテさんを訪ねた。
 教授室の書棚には、夏目漱石全集を初めとする日本の書物がびっしり並んでいた。
 
 夜、招かれたキャンパス内のゲストハウスで食事を共にしながら、メテさんにこんなことを訊ねた。
 「メテさんはどうして日本についての本を出版されないんですか?」
 メテさんの答えが奮っていた。
 「渡邊さんね、初めて日本に旅行して四五日滞在しただけで、"日本はこんな国"みたいな本を出すジャーナリストがいますよね。
 そういうのはどうかな、と思うからです。」

 “ラク”というトルコの酒を酌み交わしながら、四方山の話に耽った。

 「英語の“metallurgy”は日本語では“冶金”と言うようですが、他に言い方がないですかね」というメテさんの質問にはこう答えた。
 「大学の学部や専攻のことであれば“metallurgical engineering”の意味が含まれますね。
 ですから、そういった場合には“冶金学”より“金属工学”と言うほうが適していると思います。
 例えばヴェリは専攻が“Metallurgy”でしたが、日本語では“冶金学専攻”より“金属工学専攻”と言うほうが印象も良いかと思います。」
 メテさんの顔に我が意を得たりという表情が浮かんだ気がして嬉しかった。

 メテさんが語ってくれた留学時代のエピソードは可笑しかった。
 ある夏、京都から広島に貧乏旅行をしたそうだ。
 駅で夜明かしをしようとホームのベンチに寝ていると、駅員が巡回に来た。
 懐中電灯を照らしてメテさんの顔を覗き込んだ駅員が、ひと言呟いた。
 「なんだ、外人か。」

 こんな場合は日本語を話さないほうがいい…と、その時のメテさんは咄嗟に判断したらしい。
 駅員に促され、無言のまま駅員室に連れて行かれた。
 親切な駅員で、毛布を出して寝場所を提供してくれた上に、お茶まで淹れてくれたという。
 一言の日本語も話さなかった後ろめたさを今でも思い出す、とメテさんは苦笑した。

 外国人というだけで日本人が親切であった時代は、もう過去のものになったのだろうか。
 企業の技術研修で何週間か茨城県に滞在したというあるトルコ人エンジニアがこう言った。

 「夜コンビニに行くと、店員がジロジロ見るんだよね。
 強盗じゃないかとでも疑っているような目つきで、イヤな気持だった。」



 梅雨曇 (2020.06.26 山中湖村:山梨県)


 (2020年7月4日 山中湖にて)


 ご訪問ありがとうございました。


ブログランキング: 日本ブログ村  FC2
スポンサーサイト



テーマ : 詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など
ジャンル : 学問・文化・芸術

コメント

Secret

No title

三尺寝って面白いですね。
知りませんでした。
梅雨曇の富士山はこんな風になるのですね。
あまり見たことのない雲の様子でした。

Re: No title

かぜくささま

> 三尺寝って面白いですね。
> 知りませんでした。

インドではいろりおな三尺寝を目にし、お国柄だなぁと思いました^^

> 梅雨曇の富士山はこんな風になるのですね。
> あまり見たことのない雲の様子でした。

雲のある富士山は常に変化し続けるので面白いです。
完全に雲の中では何も見えませんが(笑。

コメントありがとうございました^^

No title

三尺寝という言葉を初めて知りました。
むくさんのところは初めて・・が多いです(笑)
梅雨曇と言うのも初めてです。
真っ白な雲に包まれた富士山 雲が山肌にお布団を
掛けたようですね。

こんにちは

そういえば…少し前までは外国の方を見れば優しく接していました。なんと言っても、遠い外国から見ず知らずの土地を訪れた方ですから。でも今は、技能実習制度が都合の良いように利用されるようになって、お金目当てで来る人が多くなったせいか新鮮さが無くなり、トラブルが増えた所為もあります。田舎では駅で寝ているとすぐに通報、誰も親切にしません。下手に泊めて夜中に豹変されると怖いというイメージがありますから。

Re: No title

katatakaさま

> 三尺寝という言葉を初めて知りました。
> むくさんのところは初めて・・が多いです(笑)
> 梅雨曇と言うのも初めてです。

歳時記のおかげです。
歳時記は佳き日本語の宝庫だと思っています^^

> 真っ白な雲に包まれた富士山 雲が山肌にお布団を
> 掛けたようですね。

私もそう思いました^^
夏ですから雲の夏蒲団ですね。

コメントありがとうございました。

Re: こんにちは

素姓乱雑さま

> そういえば…少し前までは外国の方を見れば優しく接していました。
> なんと言っても、遠い外国から見ず知らずの土地を訪れた方ですから。
>でも今は、技能実習制度が都合の良いように利用されるようになって、お金目当てで来る人が多くなったせいか新鮮さが無くなり、トラブルが増えた所為もあります。
> 田舎では駅で寝ているとすぐに通報、誰も親切にしません。

田舎でも都会でも傾向は同じかもしれませんね。

> 下手に泊めて夜中に豹変されると怖いというイメージがありますから。

かつての日本は「水と安全はタダの国」を標榜していましたね。
今は飲み水をフランス並みにスーパーで買い、セコムで安全を買う時代になりました。
それでも山紫水明の国が全く失われた訳ではないと信じています。
中国の子供たちが川の絵を描くと、水を黄色だか茶色だかで塗る子が圧倒的に多いと聞きます。
日本の子供たちが描く絵の川の水はいつまでも水色であって欲しいと思いますよね。

コメントありがとうございました。
プロフィール

渡邊むく

Author:渡邊むく
男性。岩手県生まれ宮城県育ち。商社勤務、産業技術英語通訳・翻訳者を経て現在はほぼ引退。愛妻ガンコちゃんと二人暮らし。引越し回数二十六回。現在の主な発信地は東京へも富士山へも約70kmの神奈川県秦野市。俳句は2000年から。リンクはどうぞご自由に。

最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
最新コメント
リンク
検索フォーム
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR