灯籠や今も引揚桟橋と むく

秋馬玲子句集『リラの花』

2014/06/11 Wed

 旅行から帰って郵便受けを見ると、句集が一冊届いていました。
 秋馬玲子句集『リラの花』。


秋葉玲子句集『リラの花』
秋馬玲子句集『リラの花』


 このところ時々、こうして著者から句集をご恵送いただくことが。

 秋馬さんは私が所属する結社『惜春』のベテランで、30年を超える句歴を有する方。
 感想を書いてお礼状をお出ししようと思っていますが、印象に残った俳句をいくつかご紹介します。

    露草にきのふの疲れなかりけり

 露草は花期の長い花で、6月頃から10月頃まで咲いているかと。
 秋の季題になっているのは、「月草」とも呼ばれた来歴からでしょうか。
 秋になるまで気が付かないということはなく、梅雨の頃から目にし始めますので、実際の季節感としては夏の花の印象が強いように思います。

 花期が長いと書きましたけれども、露草は一日花です。
 朝咲いて午後にはしぼんでしまいます。
 いつも朝露を載せているように瑞々しく感じるのはそのためでもあるでしょうか。

 句意は、「その瑞々しい露草には昨日の疲れなどないようだ」とも取れますが、露草が一日花であることを思うと、それだけではなさそうです。
 「瑞々しい露草を見ていると昨日の疲れも忘れてしまうようだ」という思いが伝わってきます。
 心にスーッと沁み込んでくる素直な佳句。

    愁ひありサビタの花と聞けばなほ

 作者は北海道で生まれ育った人。
 「サビタの花」を知りませんでしたが、ノリウツギ(糊空木)のことを北海道ではそう呼ぶようです。
 アジサイの仲間で、花の色は代表的には白。
 サビタはそのノリウツギのアイヌ名。

 縁が四ひらに囲まれている様子はガクアジサイのような、カシワバアジサイにも似た円錐状の花房はウツギのような風情を持った、ちょっと変わった花ですね。
 「糊空木」の名は、この木の樹液を和紙を漉く際の糊に利用したことに因んでいるようです。

 作者は北海道生まれではあっても、長年故郷を離れて暮らしていて、この花の名前をご存じなかったのかもしれません。
 愁いのあるその花の名が「サビタの花」であると教えてもらって、また名前の由来を知って、いっそう愛おしく思ったのでしょう。
 それが久しぶりに帰った北の故郷の花であってみれば、なおさら。

    風鈴の影の止まってをりにけり

 はたと風が止まった真夏の午後。
 風鈴の「影」が止まっていたという表現は見事。
 景の単純さが句を際立たせていると思いました。
 一見詠めそうでなかなか詠めない句。
 時間を止めてみせた句、とも。

 鑑賞文は省きますが、こんな句も印象的でした。

    合歓の花わたくしを待つ家ありて

    ポケットの手を出し給へ初詣

    鶏頭に一滴の露なかりけり


    いのち得て尾をふる蝌蚪を見てゐたり


 秋馬玲子句集: リラの花
 株式会社東京四季出版
 平成26年5月29日発行
 ISBN978-4-8129-0797-9
 定価: 本体2,700円 +税



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テーマ : 詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など
ジャンル : 学問・文化・芸術

コメント

Secret

こんにちは!

私の所属している結社に
秋葉礼子さん〔在 旭川〕という方が居ます。

一瞬・・あれっと思いましたが
投稿文を読み、字が違い
別人さんと解りました。

Re: こんにちは!

性が一字間違えていました。
お名前を間違えるなんて…。
ご指摘ありがとうございます。

俳句ライフもバイオリズムがあるような。
あがいても詠めない時、気楽に読める時。
バイリズムであってみれば、山あり谷ありは仕方なし。
それを繰り返した分、少しづつ気楽に詠めるようになれたらいいな、と。

おはようございます

粗忽者で・・気が付きませんでした。
了解しました。

旭川に30数年住んでいましたので
アイヌ墓地までが、散歩コ-スでした。

此処に転居しても、未だにあ・さ・ひ・か・わ・に
反応してしまいます。 

俳句ライフのバイオリズムの件
結社俳誌でビリに近かったものですから・・
大変参考になりました。<(_ _*)> アリガト

No title

りまど様

最近読んだ「虚子俳話」の一つ、ご紹介したくて、今日の日記のあとに書き足しておきます。
プロフィール

渡邊むく

Author:渡邊むく
職業:産業技術英語通訳・翻訳者。男性。俳句歴:2000年より。(主な発信地:神奈川県横須賀市、静岡県御殿場市)

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