渡邊むく俳句ブログ~まあおたいらに~渡邊むく俳句ブログ~まあおたいらに~ 「雛」掲載句(2019年)
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火のあればすなはち囲み冬花火

「雛」掲載句(2019年)

2019/11/21 Thu

   掲載句・掲載記事 (2019年)



※ 『雛』2019年7月号、8月号の掲載句を追加更新しました。


  『雛』 2019年8月号


        輝きつ羽ばたく十字揚ひばり

        (かがやきつはばたくじゅうじ あげひばり)
        2019年8月号 福神規子選



        鈴虫草なども見つけて森涼し

        (すずむしそうなどもみつけて もりすずし)
        2019年8月号 福神規子選



        郭公や妻は左を吾は右を

        (かっこうや つまはひだりをあはみぎを)
        2019年8月号 福神規子選



東京吟行会 (2019年6月13日) 福神規子先生選


       枇杷実る路地を曲がれば信誠寺

        (びわみのるろじをまがれば しんじょうじ)


心に残る一冊 (『雛』2019年8月号掲載)

 『剛力伝』 新田次郎著

 新天皇陛下は、皇太子時代のご趣味の一つが登山で新田次郎のファンでもあったと聞き知って親しみを覚えた。健全な精神を養う努力を惜しまない姿勢が感じられたからである。
 『強力伝』は新田次郎(本名藤原寛人)が気象庁に務める傍ら昭和三十年に発表した短編小説である。氏の処女作と言われるこの作品は、洗練された文章ではないにも係わらず、過去にない斬新な内容と評価されて直木賞を受賞した。
 ― 富士山の強力である小宮には、自分は坂田金太郎の再来という秘かな自負があった。小宮は白馬山頂に風景指示盤の石を人力で運び上げるという新聞社の企画に応じて、それに挑んだ。指示盤は何個かの石の組立構造で最も重い石の重量は五十貫(百八十七・五㎏)あった。小宮は五十貫の石を背負って山頂へ担ぎ上げたが、その無理が祟って世を去る ― というのが小説の粗筋である。
 『強力伝』の後書に作者はこう記している ― この小説の主人公は当時富士山観測所(後富士山測候所と改名)の強力をしていた小見山正君をモデルとして書いたものである。作中の風景指示盤は白馬山頂に現存する ―
 映画化されたものも少なくない新田作品にあって、一人の男の不条理な行動を描いたこの短編は未だに映画化されていない。その理由の一つは、不条理を正鵠にメッセージすることの難しさにあるのではないか。そもそも、作者はなぜこの小説を書いたのか、いや、書かずにはいられなかったのか。それを窺い知るヒントが、新田次郎という人の経歴の中に潜んでいるように思う。
 昭和七年、中央気象台(現気象庁)入庁、富士山測候所に配属。昭和十四年、両角てい(後藤原てい=作家)と結婚。昭和十八年、満州国観象所(中央気象台)に転職。昭和二十年、三児の父となり敗戦、ソ連軍の捕虜となり、中国共産党軍にて一年間抑留生活。昭和二十一年、帰国、中央気象台に復職。昭和二十四年、妻ていが満州引揚体験を基に書いた小説『星の流れに生きている』が評判になる。
 新田次郎は妻の成功に動かされて『強力伝』を書いたと言われるが、その希求の根源はやはり抑留・引揚体験だったのではないか。公僕藤原寛人としては妻のように自由に物を書くことに制約もあっただろう。『強力伝』は、その制約の中で、新田が戦争というもう一つの不条理を背負って書いた作品である。




  『雛』 2019年7月号


        犬ふぐり老師の恙案じゐて

        (いぬふぐり ろうしのつつがあんじいて)
        2019年7月号 福神規子選



        花満ちて吉祥天の空かとも

        (はなみちて きちじょうてんのそらかとも)
        2019年7月号 福神規子選


東京吟行会 (2019年5月9日) 福神規子先生選


       花は葉に四十九日を目前に

        (はなははに しじゅうくにちをもくぜんに)


春 秋 箋 (『雛』2019年7月号掲載)

  「惜春」入会の思い出
 「主人は変っておりまして、マスコミの取材も全部断ってしまいます。もう新しい弟子も取らないと申しています。」そう仰りながら喜子奥様は言葉を続けた。「惜春」に入会したいと、風人子先生のご自宅にお電話を申し上げた時のことである。八月も終りの頃だった。「主人のどんな句が気に入りましたか?」思いがけない質問に面食らったが、咄嗟に「嫌はれてしまへば自由油虫」の句が思い浮かんだ。しかし、この句が好きですとは言いにくく、もう一つ思い出した「前世は竜でありしと蚯蚓言ふ」の句が好きですとお答えした。「それはまた変わった句を…」と奥様。先生のご自宅からは雑木山一つ隔てた吉井に住んでいますとお伝えしたことが功を奏したか、「惜春」の見本誌をお送りいただけることになった。宅配便で届いた小さな段ボールには、横須賀吟行会の連絡先が載っている見本誌と共に、先生の句集『惜春譜』、『明易し』と『一言多言集』が同梱されていた。先生に初めてお目にかかったのは翌九月の横須賀吟行会。集合場所の横須賀中央駅のYデッキに、杖を手にしてエスカレータで上がって来られるや、「渡邊むくさんはいますか?」。初めてお聞きした先生のお声に、早世して久しい父に会ったような懐かしさを覚えた。




  『雛』 2019年6月号


        松毟鳥しらびその枝に雪残り

        (まつむしり しらびそのえにゆきのこり)
        2019年6月号 福神規子選



        花ミモザボンボニエールに収めたき

        (はなみもざ ぼんぼにえーるにおさめたき)
        2019年6月号 福神規子選

選評(秀句鑑賞): ボンボニエールとは砂糖菓子を入れる小さな丸みを帯びた菓子器で、日本では皇室のお祝い事に贈られる品として知られている。その器にミモザの花を入れたいとの遊び心はお洒落だ。


        頬白の声に背筋を意識して

        (ほおじろのこえに せすじをいしきして)
        2019年6月号 福神規子選




  『雛』 2019年5月号


        枯葎あやふく撃たれさうになる

        (かれむぐら あやうくうたれそうになる)
        2019年5月号 福神規子選



        紅梅のわけても好きなをのこ吾

        (こうばいのわけてもすきなおのこ われ)
        2019年5月号 福神則子選



        宿木に連雀の来て山湖春

        (やどりぎにれんじゃくのきて さんこはる)
        2019年5月号 福神規子選


東京吟行会 (2018年3月14日) 福神規子先生選


       苗札やハイウェイローズとはどんな

        (なえふだや はいうぇいろーずとはどんな)


春 秋 箋 (『雛』2019年5月号掲載)

 海抜千メートルの山中湖村は山梨県内の全市町村でもっとも寒いとされている。蠟梅も梅も育たず、柿も渋柿しか実らない。そんな寒冷地の冬にも鳥たちは元気。四十雀・小雀・日雀・山雀・柄長・河原鶸・赤啄木鳥・青啄木鳥・小啄木鳥・掛巣・鵙・鴲・鷽・菊戴・瑠璃鶲などの留鳥、尉鶲・鶫・花鶏などの渡り鳥である。湖畔の高木には毬のような宿木が実をたわわに実らせて、この村の春告鳥である黄連雀や緋連雀が来る日を待っている。



  『雛』 2019年4月号


        寒暁の紅富士色の鷽の胸

        (かんぎょうのべにふじいろのうそのむね)
        2019年4月号 福神規子選



        左義長やここにも富士の浅間社

        (さぎちょうや ここにもふじのせんげんしゃ)
        2019年4月号 福神規子選



        双子よとよろこぶ妻や寒玉子

        (ふたごよとよろこぶつまや かんたまご)
        2019年4月号 福神規子選

選評(秀句鑑賞): 割ってみるとまん丸い黄味が二つ並んでいた。思わぬ嬉しさを素直に喜ぶ妻や愛し。寒玉子の「寒」が効いている。




  『雛』 2019年3月号


        さ牡鹿の目のやさしさを悲しめり

        (さおしかのめのやさしさを かなしめり)
        2019年3月号 福神規子選



        日の昇り山湖しばらく冬の霧

        (ひののぼり さんこしばらくふゆのきり)
        2019年3月号 福神規子選

 ※ 原句「日昇りて山湖しばらく冬の霧」添削(規子先生):「添削によって言葉に余裕が生まれる分余韻が増す。」




  『雛』 2019年2月号


        日本のもみぢを描く子カナダの子

        (にっぽんのもみじをかくこ かなだのこ)
        2019年2月号 福神規子選



        妻の着くバスを待ちゐて冬ぬくし

        (つまのつくばすをまちいて ふゆぬくし)
        2019年2月号 福神規子選

選評(秀句鑑賞): 作者がむくさんと分かれば山中湖での作品か。一日早くやって来た作者は妻が乗っているはずのバスを楽しみに待っておられるのだろう。冬日に包まれながら…。



        実のはぜて真弓いよいよ真くれなゐ

        (みのはぜて まゆみいよいよまくれない)
        2019年2月号 福神規子選


東京吟行会 (2018年12月13日) 福神規子先生選


       師いく度通ひ来し道冬もみぢ

        (しいくたびかよいきしみち ふゆもみじ)

 ※ 規子先生のご指摘に基づき後日「師いく度通はれし道冬もみぢ」と推敲。


       激論を交せしあとの燗熱う

        (げきろんをかわせしあとの かんあつう)
        席題:熱燗


        冬薔薇一病を得て人やさし

        (ふゆそうび いちびょうをえてひとやさし)


春 秋 箋 (『雛』2019年2月号掲載)

 山中湖の名物のような霧。秋になって朝晩冷え込むようになるにつれ、夜が明けると湖面から霧が立ちあがる日が多くなる。湖の霧の上に浮かぶように聳える富岳は幻想的ですらある。冠雪の富士は曙光が差すとともに山頂から次第にうす紅を注してゆく。夏の赤富士に対し、これを紅富士と呼んだりもする。週末ともなると、富士山絶景ポイントでは厳寒にも負けないカメラマンが徹夜で紅富士を待っている。



  『雛』 2019年1月号


        塔頭の塀より高き紫苑かな

        (たっちゅうのへいよりたかき しおんかな)
        2019年1月号 福神規子選



        富士澄めりコスモスの色日々に濃く

        (ふじすめり こすもすのいろひびにこく)
        2019年1月号 福神規子選




 カテゴリーの“「雛」掲載句”をクリックすると、過去の全掲載句を一覧することが出来ます。


                月刊「雛」: 編集・発行人 福神規子
                発行所:   〒155-0033 東京都世田谷区代田6-9-10 雛発行所
                誌代:    月900円(年間10,800円)。

 ※ 「雛」の見本誌をご希望の方は上記発行所にご請求ください。
    (または、当ブログのコメント欄にその旨をお書き込みくだされば取次いたします。)
 ※ 「雛」は、長年高濱虚子、星野立子に師事し、ホトトギス本流の諷詠の道一筋に歩んで来られた先師高田風人子先生主宰の「惜春」の後継誌として発足した、福神規子先生を主宰とする句誌です。)




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テーマ : 詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など
ジャンル : 学問・文化・芸術

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プロフィール

渡邊むく

Author:渡邊むく
男性。岩手県生まれ宮城県育ち。約10年間の海外生活を除き首都圏の各地を転々。商社勤務の後、産業技術英語通訳・翻訳者。現在はほぼ引退し、愛妻ガンコちゃんと二人暮らし。主な発信地は山梨県山中湖村。俳句は2000年から。いつもあと5kg痩せたい♪

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