渡邊むく俳句ブログ~まあおたいらに~渡邊むく俳句ブログ~まあおたいらに~ 「雛」掲載句(2018年)
FC2ブログ
雪渓の細き一条富士の紺

「雛」掲載句(2018年)

2019/05/10 Fri

   掲載句・掲載記事 (2018年)




  『雛』 2018年12月号


        初鵙や何か急かされゐるやうな

        (はつがもや なにかせかされいるような)
        2018年12月号 福神則子選



        富士に灯の絶へて即ち秋気満つ

        (ふじにひのたえて すなわちしゅうきみつ)
        2018年12月号 福神則子選



        秋気満つ日々に親しきけものたち

        (しゅうきみつ ひびにしたしきけものたち)
        2018年12月号 福神則子選


雛 散 歩

 忍野富士と岡田紅陽


 現在使われている千円札や旧五千円札の裏にデザインされている富士山は、プロ写真家の草分けである岡田紅陽(明治二八~昭和四七年)の作品「湖畔の秋」を図案化したものである。一眼レフすらまだ世に登場していなかった時代に、若き紅陽は東京府の委託によって関東大震災(大正十二年)の記録写真を撮り、これを写真集として出版して世に知られるようになった。乾板、銀板を使って写真を撮影していた時代の話である。
 もとより富士山撮影に生涯を捧げると決めていた紅陽は、拠点と定めた富士山北麓の忍野村を中心に、五十余年にわたって約四十万枚の富士山写真を撮った。当初、忍野へは大月から富士道を歩いて通ったという。
 厳寒の忍野は気温が氷点下十五度ぐらいまで下がる。紅陽は撮影のためには真冬の富士山に登ることも辞さなかった。重そうな三脚の傍に褞袍を羽織り手拭で頬被りして立っている紅陽の肖像写真が残っている。
 忍野の村や近郷の山から撮った富士山、河口湖や本栖湖に足を伸ばして撮った富士山など、紅陽が撮った数々の、時には奇跡的でさえある白黒の富士山には、今日の富士山写真家の色彩感溢れる作品よりも胸を打たれる。風景写真を芸術にまで高めた紅陽の執念が伝わってくる。紅陽は富士山写真以外にも「国立公園十二勝」などの多くの風景写真を撮り、日本各地の観光発展に寄与した。
 忍野村を訪ねた時に夏野菜畑で出遭った老人がこう語った。「岡田紅陽写真美術館がある場所から、以前は佳い富士山が見えた。カメラマンが毎日行列していたよ。今は来なくなったね。」
 景色も変わったのだろうが、人々の写真撮影スタイルも変わったのだと思う。当世は、車を運転しさえすれば、紅陽の時代には考えられなかったほど簡単に目的の撮影地に行けるようになった。夜明けのパール富士撮影も夕暮れのダイヤモンド富士撮影も、車の中で待っていれば大いに寒さをしのげる。携帯電話で仲間と「今〇〇に来ている。赤富士は今イチかも。そっちはどう?あ、そう。今から移動しようかな。」などと連絡も取り合える。
 カメラも、今ではフィルムなど要らないデジタル一眼レフ時代になった。万事便利になった時代を、紅陽はどんな顔で見守っているのだろう。

   富士澄めりコスモスの色日々に濃く  むく





  『雛』 2018年11月号


        診療所吾も避暑地の村人と

        (しんりょうじょ われもひしょちのむらびとと)
        2018年11月号 福神則子選



        盆の月富士に灯の連なりて

        (ぼんのつき ふじにあかりのつらなりて)
        2018年11月号 福神則子選



        釣舟草水流れては澱みては

        (つりふねそう みずながれてはよどみては)
        2018年11月号 福神則子選



        妻に聞こへ吾に聞こへぬ鉦叩

        (つまにきこえわれにきこえぬ かねたたき)
        2018年11月号 福神則子選




  『雛』 2018年10月号


        星涼し妻のめまひの治まりて

        (ほしすずし つまのめまいのおさまりて)
        2018年10月号 福神則子選


        老二人ほどよき汗をかやと山

        (おいふたりほどよきあせを かやとやま)
        2018年10月号 福神則子選


        大型のキャンピングカー老元気

        (おおがたのきゃんぴんぐかー おいげんき)
        2018年10月号 福神則子選


        日盛やきれいにお辞儀して行く子

        (ひざかりや きれいにおじぎしてゆくこ)
        2018年10月号 福神則子選

選評(秀句鑑賞): かんかん照りの中を礼儀正しくお辞儀して去ってゆく子を見かけた。その健気さに好感を持っての一句。



  『雛』 2018年9月号


        若葉冷灯油の匂ふ杣の家

        (わかばびえ とうゆのにおうそまのいえ)
        2018年9月号 福神則子選



        遊船の桟橋閉ぢて湖暮るる

        (ゆうせんのさんばしとじて うみくるる)
        2018年9月号 福神則子選



        句座久し現るる人みな涼し

        (くざひさし あらわるるひとみなすずし)
        2018年9月号 2018年7月22日横須賀吟行会 風人子先生後選




  『雛』 2018年8月号


        朴の花標高高き出湯の宿

        (ほおのはな ひょうこうたかきいでゆのやど)
        2018年8月号 高田風人子選



        幼らの気付かざりしよ朴の花

        (おさならのきづかざりしよ ほおのはな)
        2018年8月号 高田風人子選



        朴の花訛り豊かに杣語り

        (ほおのはな なまりゆたかにそまがたり)
        2018年8月号 福神則子選




  『雛』 2018年7月号


        海うしの雨ふらしのと春の磯

        (うみうしのあめふらしのと はるのいそ)
        2018年7月号 高田風人子選



        ささやかに耕し大き富士仰ぐ

        (ささやかにたがやし おおきふじあおぐ)
        2018年7月号 高田風人子選



        花こぶし富士の農鳥遠からず

        (はなこぶし ふじののうとりとおからず)
        2018年7月号 福神則子選



        天と地の何かが違ひ花冷ゆる

        (てんとちのなにかがちがい はなひゆる)
        2018年7月号 福神則子選




  『雛』 2018年6月号


        髭剃つたり剃らなかつたり老の春

        (ひげそったりそらなかったり おいのはる)
        2018年6月号 高田風人子選



        忘れ雪一誌にありし彼女の名

        (わすれゆき いっしにありしかのじょのな)
        2018年6月号 高田風人子選



        雛飾る手作りの遺句集も添へ

        (はつしぐれ ひびにでんわはするものの)
        2018年6月号 福神則子選

※ 2018年1月7日義母田島伸枝逝く。遺句集は義母が所属していた『天為』横須賀句会の松浦泰子さん他の諸氏の手による。


        啓蟄や菜園のある庵欲し

        (けいちつや さいえんのあるいおりほし)
        2018年6月号 福神則子選




  『雛』 2018年2月号


        母強し嬰をも負ひて秋の尾根

        (ははつよし ややをもおいてあきのおね)
        2018年2月号 高田風人子選



         一山を無事にくだりて社秋

         (いちざんをぶじにくだりて やしろあき)
         2018年2月号 高田風人子選



         初しぐれ日々に電話はするものの

         (はつしぐれ ひびにでんわはするものの)
         2018年2月号 福神則子選



 カテゴリーの“「雛」掲載句”をクリックすると、過去の全掲載句を一覧することが出来ます。


                月刊「雛」: 編集・発行人 高田風人子 福神則子
                発行所:   〒155-0033 東京都世田谷区代田6-9-10 雛発行所
                誌代:    月900円(年間10,800円)。

 ※ 「雛」の見本誌をご希望の方は上記発行所にご請求ください。
    (または、当ブログのコメント欄にその旨をお書き込みくだされば取次いたします。)
 ※ 「雛」は、長年高濱虚子、星野立子に師事し、ホトトギス本流の諷詠の道一筋に歩んで来られた高田風人子先生主宰の「惜春」の後継誌です。(「雛」主宰:福神則子先生)



 ご訪問ありがとうございました。


ブログランキング: 日本ブログ村  FC2
↓ よければ拍手・コメントをお願いします。励みになります。
スポンサーサイト



テーマ : 詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など
ジャンル : 学問・文化・芸術

コメント

Secret

プロフィール

渡邊むく

Author:渡邊むく
産業技術英語通訳・翻訳者。男性。岩手県生まれ宮城県育ち。人生の大半は首都圏暮し。海外生活約10年。俳句歴:2000年より。主な発信地:神奈川県横須賀市、山梨県山中湖村。

最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
最新コメント
リンク
検索フォーム
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR