Moon Over Water - Updated: September 17, 2018

FC2ブログ
花野行くディズニーランドを行くごとく

針槐(はりえんじゅ)の花

2018/06/11 Mon

    熔岩の原花房高く針えんじゅ /むく

         (らばのはら はなぶさたかくはりえんじゅ)

 元の句「熔岩原花房高く針えんじゅ」を推敲。(2018.6.30)



 ニセアカシアの花 (2018.6.5 山中湖:山梨県)


 自衛隊北富士演習場の境界に接した林に、一本のハリエンジュ(別名ニセアカシア)が道に張り出すようにして聳えていた。
 なぜこんなところに?

 ハリエンジュは侵略的外来種の一つでもあるが、それよりもまず、標高約千メートルの寒さによくも適応して大樹に育ったものだ、と感心した。
 遠くから見たときには他の大木に絡んだ白藤が花咲いているのかと思った。

 ふと、自衛隊北富士演習場の戦後の歴史に思いが及んだ。
 戦後、北富士演習場は米軍が接収し、実弾射撃訓練に使用してきた。
 昭和33年(1958)には日本に返還されたが、その後も米海兵隊による使用は続けられた。
 自衛隊管理の演習場に用地転用されたのは、ベトナム戦争が終結した昭和48年(1973年)のことである。

 ハリエンジュは北米が原産とされる植物で、日本に渡来したのは明治時代の中頃だそうだ。
 高さは25メートルほどにまで達する。
 成長が早く、生命力が強いことで知られている。
 アカシア蜂蜜のほとんどは、このハリエンジュから集められる。
 ざっと、こんな植物らしい。
 熔岩の瓦礫の原に適応するのも頷ける。

 見たわけではないが、北富士演習場内の樹木のほとんどは、かつて米軍による射撃訓練の標的となって倒されたそうだ。
 その後に植えられた成長の早い植物の一つにハリエンジュがあった、ということは考えられるのではないだろうか。
 戦争で破壊され荒廃した地に成長の早い植物の種を空からばら撒くのは、米軍が踏襲してきた常とう手段である。

 例えば、砲弾でえぐられ、戦車で蹂躙され、火炎放射器で焼かれ、以前の面影を留めない焦土と化したサイパン島では、“パガンパガン”の木の種が撒かれた。
 戦闘で命を失った日本兵や島の奥へ奥へと逃げる途中で銃で撃たれたり火炎放射器で焼かれたりした民間人のおびただしい死骸の多くはそのまま放置され、やがて成長したパガンパガンのジャングルに埋もれた。
 後に、それが遺骨収集をより困難なものにした原因ともなった。

 “パガンパガン”は当時を知る島の老人から聞いた名前で、本当の植物名は知らない。
 ハリエンジュと同じマメ科の植物なのだろう。
 線香と蝋燭を携え、西はマリアナ諸島から東はマーシャル諸島まで、ミクロネシアの島々を行脚した二十代の遠い記憶から、合歓のような葉であったことがおぼろに蘇る。
 
 焦土ではなくとも、米軍基地内やその周辺にはハリエンジュが植えられていたりもする。
 この花に郷愁を覚えるアメリカ人も少なくないからだろうか?

    太刀魚や遺骨収集船の去り /むく(旧詠)



 ニセアカシアの花 (2018.6.5 山中湖:山梨県)


 (2018年6月11日 山中湖にて)



にほんブログ村 ポエムブログ 俳句へ ご訪問ありがとうございました。
スポンサーサイト

テーマ : 詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など
ジャンル : 学問・文化・芸術

コメント

Secret

プロフィール

渡邊むく

Author:渡邊むく
産業技術英語通訳・翻訳者。男性。岩手県生まれ宮城県育ち。人生の大半は首都圏暮し。海外生活約10年。俳句歴:2000年より。主な発信地:神奈川県横須賀市、山梨県山中湖村。

最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
最新コメント
リンク
検索フォーム
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR