Moon Over Water - Updated: September 17, 2018

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花野行くディズニーランドを行くごとく

小菊

2017/10/28 Sat

    痩せ畑の小菊も富士を仰ぎをり /むく

         (やせはたのこぎくも ふじをあおぎおり)


 10月27日(金) 秋晴れ

 昨日は山中湖湖畔の森をたっぷり散策。
 疲れた。
 この二月ほど、日々の散歩もままならないほど所用に追われていたので、すっかり身体が鈍(なま)ってしまったのだ。

 予報では、秋晴れも今日までで明日からは天気が崩れるという。
 この上天気を見過ごす手はない。
 今日も身体を苛めに行こう。
 と言っても、一気に金時山や愛鷹(あしたか)山に登るのは無茶が過ぎるというものだろう。
 足柄峠に登ろう、と決めた。

 * * * * *
 
 御殿場駅の駐輪場に自転車を預け、電車で隣の足柄駅まで行き、そこから歩いて足柄峠に登る。
 道は78号線という県道だが、車はほとんど通らない。
 ある意味では最高に整備された登山道である。

 満天星(どうだん)や楓の庭紅葉に彩られた家並みが途絶え、町はずれの小さな寺の本堂を見下ろし、熟した実がたわわの柿の木を見上げ、赤のままや野紺菊(のこんぎく)の素朴な路傍の秋色に足を止め、真っ赤に照り返すガマズミの実を眩しみ、おおかた実の落ちた木通(あけび)の蔦を見上げ、鵙(もず)の高音(たかね)の聞こえては手庇(てびさし)をかざしなどしながら、登る。
 羊田(ひつじだ)になった棚田や色とりどりの小菊に囲まれた段々畑の間を縫って、道はやがて深い杉木立の中に入る。
 このところの雨で水量の増した沢の水音が、瀑布の音のように聞こえる。
 ギャーと啼いて、杉の高枝を掛巣(かけす)が飛び回る。
 早くも冬支度を始めたか。
 どんなところに隠すのだろう、拾い集めた木の実。



足柄峠登山道にて (2017.10.27 竹ノ下:静岡県駿東郡小山町)


 恐らくはここが見納めかと思われる狭い山畑から富士山を撮ろうしたところ、シャッターが押せない。
 カメラの電池切れだ。
 重たい600mmの望遠レンズや三脚まで担いで来たというのに、なんという失態。
 今日はスマホで撮るしかない。



聖天堂 (2017.10.27 足柄峠:静岡県駿東郡小山町)


 標高759メートルの足柄峠に着く。
 土地の人は足柄峠とは言わず、聖天(しょうてん)さんと言う。
 峠にある聖天堂に親しみを込めて、そう呼んでいるようだ。
 聖天さんは縁結びのご利益があるそうだが、残念ながら、今のところ私には無用だ。

 峠付近の道の見晴らしの良い場所に車を止め、独りで富士山を見ていた人に声を掛けられる。
 私より十歳ほど年上と知る。
 歩いて登ってきた私が羨ましいと言う。

 今は平塚にお住まいだが、御殿場の仁杉(ひとすぎ)出身だというその御仁。
 これから訪ねる仁杉の孫の家が見えないか、峠から覗いていたらしい。
 次郎柿が熟したので収穫に行くのだそうだ。

 面白い話を伺った。
 その御仁のご先祖は建武(けんむ)二年(1333年)の箱根・竹ノ下の戦いで足利尊氏の軍と戦って敗れた新田義貞方(後醍醐天皇方)に付いた菊池氏の家臣だったというのだ。
 戦に敗れてからは、居所を移したり姓の一部を変えたりして、落ち武者狩りから逃れて家名を守り続けてきたのだとか。
 富士山周辺にも少なくない、いわゆる「イッケ」(同族集団)のお一人なのかもしれないが、竹ノ下の古戦場を見下ろす足柄峠で、そういう人に偶然に出遭ったという事実こそが稀有であり、面白いと思った。

 室町時代の幕が開ける端緒となった箱根・竹ノ下の戦いの兵(つわもの)たちの壮絶な死闘が目の前に見えて来るような気持に私はなったが、同じ景色を、その御仁はどんな想いで眺めていたのだろう。
 今でも、一番愛着を持っている土地が御殿場であることは間違いのないところだろう。



秋晴れ (2017.10.27 足柄峠:静岡県駿東郡小山町)


 峠の一角にある足柄城址に立つ。
 富士山の眺望が一番良い場所だ。
 30代半ばかと思われる二人のドイツ人が記念写真を撮っていた。
 「その石組に乗って撮ったら?
 大丈夫、乗っても壊れたりしませんよ。」
 そう言ってあげると、二人で代わるがわる石組に乗って写真を撮り始めた。
 ついでに私も1枚撮ってもらう。

 「あなたがた二人、普通の観光旅行にも見えませんが…。」
 「会社に一年に一度5週間の休暇があって、今年は日本に来て、車で日本じゅうを旅行してるんです。」
 「へー、気前のいい会社だね。」
 「○○社、知ってますか?」
 「もちろん、知らない人はまずいない会社だ。」

 ○○社は、IT産業の雄として、世界でもつとに有名な企業である。
 それにしても豪儀なことだ、とつくづく感心した。
 仕事盛りの彼らに敢えて訊ねはしなかったが、旅行の費用も基本的には会社負担なのではないかと思う。
 出張扱い並みというところか。



足柄城址にて (2017.10.27 足柄峠:静岡県駿東郡小山町)


 このところ、外国人観光客と知り合って話をすることが多い。
 一月ほど前に御殿場から横須賀に戻った時は、御殿場線の電車でメキシコ人の若いカップルと隣り合わせた。
 富士山の噴火のことに始まって、話は地震のこと、津波のこと、原発事故のことにまで及んだ。
 メキシコも地震多発国で、つい最近も大きな地震に見舞われている。
 別れ際に、記念にと5ペソ硬貨を1枚もらった。

 今週横須賀から来た時は、御殿場線の電車で一人旅のアメリカ人女性と隣り合わせた。
 横須賀から来て、御殿場に行くのだという。
 私と同じだ、ということで話が弾んだ。
 もっとも、彼女は観光客ではなく、ご主人は横須賀の米海軍基地で働いているそうで、彼女は彼女の仕事で御殿場のキャンプ富士に行くのだ言う。
 40代半ばぐらいだろうか、少し小太りの女性だった。
 なんとなく、子供はいないのかもしれないという気がした。
 話し方が驚くほどゆっくりなのは、異文化に適応することに努めているからだろう。
 感心なことだ。

 横須賀には米海軍基地が、御殿場にはキャンプ富士という米軍海兵隊基地がある。
 東富士演習場は、日本の自衛隊とキャンプ富士が共同で使用している演習場である。

 彼女の仕事というのが面白かった。
 除隊間近な兵士に、除隊後の就職活動について、心構えを指導するのだという。
 「除隊後就活インストラクター」、どんな仕事だろうかと想像してみた。
 気苦労も多そうだが楽しそうでもある。
 概して女性のほうが適性の高い仕事かもしれない。

 山中湖へ行った昨日は昨日でイタリア人カップルと知り合い、今日もまたドイツからの二人連れと知り合ったという次第。
 行きずりの人との会話は、日本人より外国人とするほうが楽しい。

 * * * * *

 万歩計のカウンターは昨日が一万五千歩、今日は二万六千歩を数えた。
 たとえ天気が良くても、明日は一歩も歩けそうにない。



芒と富士山 (2017.10.27 足柄峠:静岡県駿東郡小山町)



カネやモノでなく、未来の大人たちに豊かな心の大切さを伝えられる私たちに。(渡邊むく)


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テーマ : 詩・和歌(短歌・俳句・川柳)など
ジャンル : 学問・文化・芸術

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No title

突然の訪問、失礼いたします。
私はこちら⇒https://goo.gl/J4i7FY
でブログをやっているさくらといいます。
色々なブログをみて勉強させていただいています。
もしよろしかったら相互リンクをお願いできないでしょうか?
「やってもいいよ」という方はコメントを返してくだされば、
私もリンクさせていただきます。
よろしくお願いします^^

No title

こんにちは!
語学が堪能なので外国の方と直ぐ会話が出来て
羨ましいです(*'▽')

俳句界11月号で沢山の佳句を見せて頂きました(*'▽')
みなとは、全没!!かと思いました(ノД`)・゜・。

Re: No title

みなとさま

> 語学が堪能なので外国の方と直ぐ会話が出来て
> 羨ましいです(*'▽')
それしか出来ないようなものです^^

> 俳句界11月号で沢山の佳句を見せて頂きました(*'▽')
目に止めていただいてありがとうございます。
何が良いんだか自分でも分からないことがよくありますが、共感していただけたことに感謝です。
所詮日記代わりの俳句にしても、あまり独りよがりと思うことも多いので、矯正を図る意味でも。

> みなとは、全没!!かと思いました(ノД`)・゜・。
そんなことはありません。
薄っぺらな胸ではありますが(お腹ではなく)、御句の一つ一つ、どれほど深く沁み込むことか。

この後2ヵ月ほど投句をご無沙汰してしまいました(笑。
またおいおいと。

コメントありがとうございました。
プロフィール

渡邊むく

Author:渡邊むく
産業技術英語通訳・翻訳者。男性。岩手県生まれ宮城県育ち。人生の大半は首都圏暮し。海外生活約10年。俳句歴:2000年より。主な発信地:神奈川県横須賀市、山梨県山中湖村。

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