かぶとむし薄毛の頭に止まりけり (かぶとむし うすげのつむにとまりけり)
かぶとむし森へと返す朝まだき /むく (かぶとむしもりへとかえす あさまだき)

アオゲラ (2019.06.27 山中湖村:山梨県)
カブトムシ Part-2 ぼんやりと目が覚めると何か音が聞こえる。
一つは除湿器の作動音だ。
点けっぱなしで押入の前に置いて寝た。
気になったのはもう一つの音。
ガリガリと何かがうごめいている音。
私が寝ている和室の中らしい。
部屋の灯を点けると、畳の上にカブトムシが居た。
リビングの窓のそばに置いた段ボールの箱から這い出て来たらしい。
戸襖を開けたまま寝たので、カーペットを這ってリビングを横切り、寝室に入ってきたらしい。
布団の足元のほうの畳の上で、しっかりと角を立て、四肢…いや前足、中足、後足を踏ん張っていた。
元気そうだ。
私を起こしにきたのか?
時計を見ると午前四時の少し手前。
森に帰りたいのか?
まだ寒いよ。
私の蒲団に潜り込みに来たのかな?
カブトムシを段ボール箱の中に戻した。
が、すぐに翅から唸りを上げて段ボール箱から飛び出した。
これだけ元気なら森に帰れるかもしれない…と思った。
窓を開けてカブトムシをバルコニーの床の上に置いた。
が、バルコニーに置いてある私のサンダルの下に潜り込もうとする。
飛び立つ様子がない。
仕方ない、手伝うことにするか…と、私もバルコニーに出ることにした。
サンダルを履くとカブトムシがズボンの裾にしがみ付いた。
温度計を覗くと外気温は18℃。
森に帰るにはまだ寒過ぎるか。
ズボンを這い上がったカブトムシがシャツの背中に回り、やがて首筋まで達した。
頭まで上るつもりかな?
首を引っ込めると、シャツのカラーと頭との距離が詰まった。
すかさずカブトムシが頭部に移った。
髪がゴソゴソする。
こそばゆい。
カブトムシはついに頭の天辺まで上った。
指を角に挟まれないように気を付けながら、頭の上に手をやった。
指が触れたその瞬間、カブトムシが飛び立った。
辺りに視線を走らせるが、どこにもカブトムシの姿が見えない。
目の前の木立のどれかの葉に乗ったか。
・・・元気でな。
最後はあっけない別れだった。
いや、どんな別れも最後はあっけないものなのだろう。
おそらくは助かるまいと思いながらも介抱?した二日間。
地上に出た後のカブトムシの命は短い。
精一杯輝いて生きて欲しい。
今夜はカブトムシの快気祝い♪
アオゲラ (2019.07.05 山中湖村:山梨県)
(2020年7月10日 山中湖にて)
ご訪問ありがとうございました。
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