渡邊むく俳句ブログ~まあおたいらに~渡邊むく俳句ブログ~まあおたいらに~ 2019年12月
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航跡もイルカの群も夕焼ける

燗熱し

2019/12/15 Sun

    燗熱し逝かれしことを知らずをり /むく


        (かんあつし ゆかれしことをしらずおり)





 霊峰 (2019.12.14 山中湖村:山梨県南都留郡)


 消息欄

 お見舞いに行きそびれていたTさんが、亡くなられたとの報。
 何をおいても見舞いに参ずるべきだったが、間に合わなかった。
 慙愧。

 カラオケが大好きだったTさん。
 陽気で思いやりのある酒飲みだった。

 そのTさんとHさんと私の三人の月例飲み会は、三年ほど続いた。
 Tさんは冬でもビールしか飲まなかった。
 Hさんはいつも焼酎。
 私は日本酒。
 酒はいつも三者それぞれ。

 自販機で買ってきた缶ビールを前に、今夜は静かに独酌。
 Tさんにいつも歌わされた『よいとまけの唄』、心の中でアカペラしよう…。
 (合掌。)


 (2019年12月15日 山中湖にて)


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雪催(ゆきもよい)

2019/12/14 Sat

    ふるさとの恋しき日なり雪もよひ

        (ふるさとのこいしきひなり ゆきもよい)






    茶など淹れこれからのこと雪もよひ /むく

        (ちゃなどいれこれからのこと ゆきもよい)





 寒い大陸から来たんだね、カシラダカ (2019.11.30 山中湖村:山梨県南都留郡)


 遁走曲(フーガ)

 雪もよいにはセロの遁走曲が鳴る。
 例のニ短調のではない、もっと懐かしい
 …賢治の不器用なセロ弾きが弾く
 わびしい楽曲。

 わたしが作り、わたしが弾いているのか、
 遠いむかしの、語るときの父の唇の振動か、
 あるいは、降り積もる大地の胎内に
 眠る、わたしの音。


 (2019年12月14日 山中湖にて)


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街師走 / 寒さ

2019/12/13 Fri

    街師走幕見に通ふ大歌舞伎 /むく

        (まちしわす まくみみにかようおおかぶき)





 ドスの利いた顔のシメ (2019.12.01 山中湖村:山梨県南都留郡)


 幕見

 現役のサラリーマンだった頃、正月休みにはよく家でテレビの時代劇番組を観た。
 「新春時代劇スペシャル」や、それと似たような企画番組がいろいろあった。
 観ているうちに、酔ったのか覚めたのかが判然としなくなるテレビのお正月時代劇。
 大いに楽しみだった。

 そのお正月時代劇でまっ先に思い出すのは忠臣蔵。
 正月に限らず、数えきれないほど何度も観たのだが、何回見ても飽きることなく楽しめた。

 いっとき、歌舞伎の幕見にも通ったことがある。
 松竹歌舞伎座が建て替えられる前で、まだ独身だった頃のことだ。

 幕見に通うようになったのには、あるきっかけがあった。
 日本を訪れたアメリカの取引先の社長の奥様が「歌舞伎を観たい」と言うので、その案内係としてご一緒したことである。
 歌舞伎座での観劇はその奥様も初めてだったが、私にとってもまったく初めてのことだった。
 伝統芸能をはじめとする日本の古典文化について、あまりにも無知な自分を大いに恥ずかしく思ったことを覚えている。

 一人で幕見に通った歌舞伎座の出し物は『仮名手本忠臣蔵』。
 超初心者の私でも親しめる演目と思っての選択だった。
 当時、十二月恒例の大歌舞伎公演として、忠臣蔵は毎年興行されていたような気がする。

 師走の歌舞伎見物、独身時代だったから出来たのかもしれない。





        白粉の残りてゐたる寒さかな /中村吉右衛門


 『鬼平犯科帳』の長谷川平蔵役でも知られる現在の二代目中村吉右衛門も俳人だが、掲句の作者は初代吉右衛門。屋号は播磨屋。初代は明治から昭和にかけて活躍した。弓と俳句が趣味で、俳句は虚子の弟子として『ホトトギス』に拠った。秀山という俳号を持っていたが、虚子の薦めで芸名の中村吉右衛門で実作するようになったという。二代目も初代と同じ中村吉右衛門の芸名で作句している。



 (2019年12月13日 山中湖にて)


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討入日 / 夏木立(なつこだち)

2019/12/13 Fri

    討入日義士にあやかり下り酒

        (うちいりび ぎしにあやかりくだりざけ)






    討入日酒は剣菱男山 /むく

        (うちいりび さけはけんびしおとこやま)





 赤穂忠臣録絵巻「唐崎全助」 (西宮市立図書館デジタルコレクションより)


 酒は剣菱男山

 下り酒とは江戸時代に上方で生産され、江戸に運ばれた酒のこと。
 上の浮世絵に描かれた菰冠(こもかぶり)にロゴが見える「剣菱」と「男山」は、その代表的な銘柄だった。
 江戸っ子の間で「酒は剣菱男山」と言われるほどの評判を取った。
 どちらも伊丹の酒だった。
 時の流れに蔵元も人も移り変わりはあったが、「剣菱」も「男山」も現存している。

 剣菱は八代将軍吉宗の御膳酒にも指定されていたそうだ。
 そんな畏れ多い酒とも知らず、若いころの私は、「酒は剣菱をもって中道となす」などと自慢する剣菱党の一人だった。

 四十七士の一人大高源五は「子葉」の雅号を持つ俳人で、芭蕉の十哲の一人宝井其角の弟子であった。
 また源五は茶人でもあり、吉良邸出入りの茶の湯の師山田宗徧から、12月14日には吉良邸で茶会が催されることを聞き出している。
 物語の忠臣蔵には、其角と源吾にまつわる有名な場面がある。

 ― 討入前日の12月13日、両国橋で其角が煤払い竹売姿の元弟子の子葉、すなわち大高源吾に出遇った。
 源五は変装して吉良屋敷を探索していたのだが、其角は知る由もない。
 其角は、武士を捨て町人になった源五が煤払いにまで身をやつしたと思った。
 その源吾に、其角は「年の瀬や水の流れも人の身も」と発句(上の句を詠む)。
 いろいろと境遇が変わるのが人生だが心豊かに俳諧道をお進みなさい、という師としての思い遣りが滲んでいる。
 これに、源五は「あした待たるるこの宝船」と付句(下の句を返す)。
 落ちぶれた私ではありますが、胸中には明日を待っている宝船があるのです、と解せよう。
 はて、宝船とは…と其角はその場では意味を理解出来なかったが、主君の仇討ちを果たした四十七士の中に源吾も加わっていたことを聞き、源吾が明日が討入であることを密かに歌に託して今生の別れの挨拶としたことを知るのである。 -

 その赤穂浪士討入の日12月14日は明日。
 義士を偲んで酌んでみるのも一興かと。





        酒十駄ゆりもて行や夏こだち /与謝蕪村


 下り酒を詠んだ句のようだ。当初はこうして馬に運ばせたが、江戸での人気が高まるとともに、下り酒は「樽廻船」などで大量に輸送されるようになった。輸送中、揺られ揺られて味の硬かった酒がまろやかに熟成したとも謂われる。



 (2019年12月13日 山中湖にて)


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寒造(かんづくり) / 落葉

2019/12/12 Thu

    寒造り杜氏の一人の米寿なる /むく

        (かんづくり とじのひとりのべいじゅなる)




 上善水の如し

 酒がお好きだった風人子先生。
 ある時、食通の俳人で知られるSさんに「佳い酒とは」と訊ねられたそうだ。
 Sさん答えて曰く、「水のような酒」と。
 そんな話を先生から伺い、さすがは由緒ある家柄のSさん…と感服した。
 「上善水の如し」という老子の言を借りての答え、と受け取ったので。

 「上善如水」という名の酒もある。
 上善の酒を飲んで、水のように生き、と言える日は幸せ。

 句は、「現代の名工」にも認定された杜氏、農口尚彦氏ご健在と知って。



 曙光 (2019.12.11 山中湖村:山梨県南都留郡)





        酔うても居かなしき時は落葉蹴る /高田風人子




 (2019年12月12日 山中湖にて)


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雑炊(ぞうすい)

2019/12/11 Wed

    吾が雑炊日々に具材を変ふる妻 /むく

        (わがぞうすい ひびにぐざいをかうるつま)





 畑仕舞 (2019.11.30 山中湖村:山梨県南都留郡)


 雑炊

 今冬はじめて牡蠣鍋を。
 よく体が温まるよう、味噌味で。
 非常時用のカセットコンロの出番。
 いざという時に使い方にまごつかないように、たまには使う訓練をしておかないと。

 白菜の甘くなる季節は鍋がうれしい。
 鍋のあとの雑炊のご飯は、いつものように玄米入り。
 GI値を抑えるよう。
 玄米入り雑炊でも鍋のあとは普段以上に美味。
 次はどんな鍋にしてもらおうかな♪



 富士晴朗 (2019.12.05 富士吉田市:山梨県)






        雑炊に膝を正して老いにけり /高田風人子


 膝を正すような雑炊とはどんな雑炊なのだろう。酒席の後の蟹雑炊や河豚雑炊などか。それともご自宅で召し上がる普段の雑炊か。どうして膝を正されたのだろう。奥様への感謝か。それとも、どこまでも虚子恋一途の先生らしく、虚子へ思いを馳せられたか。後者のような気がする。「雑炊をこのみしゆゑに遁世す」、「雑炊や後生大事といふことを」。どちらも虚子の句。

 (2019年12月11日 山中湖にて)


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年忘(としわすれ)

2019/12/10 Tue

    勢ひで宝くじ買ふ年忘れ /むく

        (いきおいでたからくじかう としわすれ)





 クリスマス飾りも富士山の、寓居のある館 (2019.12.09 山中湖村:山梨県南都留郡)


 宝くじ

 宝くじを買うことは滅多にない。
 夢のない男、かもしれない。
 たまに付合いで買っても、本気ではないので買ったことすら忘れてしまう。
 新聞の当選発表も見たことがない。

 一度だけ抽選結果を調べたことがある。
 ときどき接待で利用していた料理屋にまた行くことになった時だった。
 その前に行ったときに、女将が苞(つと)代わりに宝くじを数枚くれたことを思い出したからだ。

 もし宝くじの番号を女将が控えていて、運悪くそれが当選番号だったら…。
 抽選結果も見ていない…では気まずい思いをしかねない、と思ったのである。

 財布の隅に入っていた数枚の宝くじを取り出し、家内に電話して抽選結果を調べてもらった。
 幸い、どれも外れていたので事なきを得た。

 思わぬ雨に降られて宝くじ売り場の傍で雨宿りをしたことがある。
 ふた昔以上も前のことだ。
 雨宿りのついでに、百円(だったと思う)のスピード宝くじを一枚買った。
 五十円当たった。
 五十円をもらっても仕方がない…と、もう五十円を足してまた一枚買った。
 すると今度は五百円当たった。
 その五百円全部また買った。
 今度は千円当たった。

 「運がいいですね…三回も続けて当たる人って、まずいないんですよ」と売り子さん。
 しまった、よく人が言う「運を全部使い果たしてしまった」というのはこれか!
 と、それ以上は買わなかったが、後の祭りである。

 あれ以来、宝くじは買ったことがない。
 …いや、あるある。

 イギリスのパブで十人ほどの連中とワイワイ飲んだ夜、みんなでロトを買ったことが。
 何週か続けて当選者が出ずに配当が膨れ上がり、当たると途方もない大金持ちになるというものだった。
 なんでも、その預金利息だけでも、一族郎党を引き連れてチャーター機で世界一周旅行してもお釣りが来るほどだとか。
 一同大いに盛り上がって前祝の杯を重ねたことは言うまでもない。

 いい夢だった…が、やっぱり当たらなかった。
 何しろ、運はスピード宝くじで千円当たって使い果たしまったので。

 忘年会の余勢を駆って宝くじを買うことも、もう二度とあるまい。



 山巓寒風 (2019.12.05 山中湖村:山梨県南都留郡)





        きみ話わかるよ飲めよ年忘 /高田風人子


 肩肘を張らずに日ごろの労をねぎらう年忘れ。とは言え上司も部下も、それぞれ気遣いをし合う場でもある。お銚子を手に酒を勧めている先生。いつ頃の御句か…三十代か。過日の「風人子先生を偲ぶ会」で、酒席での先生はとても陽気であったと伺った。お若かった頃は殊に。酒席で楽しく振る舞うのも気遣い。人に愛される。

 (2019年12月10日 山中湖にて)


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凍る / 氷

2019/12/09 Mon

    盆水の凍りゐるらし小鳥去ぬ /むく

        (ぼんすいのこおりいるらし ことりいぬ)





 強霜の朝のホオジロ (2019.12.05 富士吉田市:山梨県)


 鳥の給餌と水遣り

 去年の冬は餌台を作ってバルコニーに置いたが、今年は野鳥に餌を与えないことにしている。
 バルコニーの餌台には、シジュウカラ、ヤマガラ、コガラ、ヒガラ、ゴジュウカラ、カワラヒワ、ヒヨドリ、イカルなどが引きも切らずにやってくる。
 鳥たちが来すぎるので、他の居住者の迷惑になるのではと思うため。
 苦情が寄せられたわけではないが、「隣のバルコニーには糞をしないように」と鳥たちに言い聞かせるわけにもゆかず。

 水だけは与え、毎朝替えている。
 水は飲むだけではなく、鳥たちは冬でも水浴びも楽しんでいる。
 これからは、替えた水がすぐまた凍ってしまう日が増えるだろう。
 底の浅いプラスチック皿の水入れは凍りやすい。

 水入れの氷を私はデッキブラシの柄で突いて割る。
 ガンコちゃんはお湯をかけて融かす。

 横浜から帰ってきたガンコちゃんに、昨日書いたカシミアのことでキビシイ追及を受けた。
 やれやれ、虎穴に入ることも何のその…の闘志は、禍は筆より出でて…の勇み足に。

 なんだか、とてつもなく大きなプレゼントを期待しているらしい…。
 チョコレートではダメですかぁ?





        おもしろう鴨の滑りし氷かな /岸田稚魚


 枝を踏み外す鳥は何度も見たが、鴨が氷の上で足を滑らせる光景はまだ見たことがない。が、実際そうなのだろう。水鳥の水掻きは氷上を自由に歩き回るのには適していないのではあるまいか。「おもしろう滑りし」には、単に足を滑らせたというだけではなく、着陸に失敗しそうになったり、転んだり、転ばないように一層ヨチヨチ歩く鴨の様子も想像される。鴨にとって氷は大敵。湖などが結氷すると採餌できる場所を求めて移動する鴨もいるようだ。

 (2019年12月9日 山中湖にて)


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マフラー / 十二月八日

2019/12/08 Sun

    マフラー褒むカシミアらしと気のついて /むく

        (まふらーほむ かしみあらしときのついて)





 エナガ、ある人が子猫のよう!と (2019.12.3 山中湖村:山梨県南都留郡)


 バースディ・ギフト

 マフラーでもストールでも、ガンコちゃんの着こなしを褒めた記憶がない。
 プレゼントするとすぐに娘の物になる。

 誰のカシミアを褒めたのか?
 まあ、褒めることも男は大事、ということで。

 もうすぐ誕生日だね。





        十二月八日かの日のごとく晴れ /高田風人子


 今日12月8日は太平洋戦争開戦記念日。昭和16(1941)年のその日、「ニイタカヤマノボレヒトフタマルハチ」の司令部の暗号電を受け、帝国海軍の聯合艦隊機動部隊がハワイの真珠湾を攻撃した日。当時、風人子先生十五歳。終戦までの約三ヵ月、入隊して福山の連隊だったかに配属されたとお聞きした。「軍隊というのは要領次第のようなところもあって…狡いことも覚えてネ」と呟かれたことが耳に残る。金太郎飴のようにどこを切っても正直の二字しかない先生らしくない、意外な言葉だったから。狡いと言っても、上官の靴を磨いて理不尽な体罰を免れたといった他愛のないことだった。「あの日」ではなく「かの日」、「やうな」ではなく「ごとく」。その日を振り返る作者の心持ち。

 (2019年12月8日 山中湖にて)


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山茶花(さざんか) / 秋

2019/12/07 Sat

    街騒に山茶花の白匂ひけり

        (まちざいにさざんかのしろ においけり)





    故山秋終の住処といふことを /むく

        (こざんあき ついのすみかということを)





 仙台美人のような白い山茶花 (ストック写真)


 転居

 二十年暮らした横須賀を離れることになった。
 横須賀の家を買っていただいた方への引渡しを、昨日完了してきた。

 引っ越し先は仙台…の予定だったが、横浜にいる娘の健康に不安が生じて叶わなくなった。
 仙台の不動産会社には迷惑をおかけした。
 金銭的な迷惑ではないが、お骨折りいただいた労を無駄にしてしまったのだ。
 お騒がせして…と謝るだけでは自分の気がすまない負い目を感じている。

 振り出しに戻って新たな転居先を考えた。
 娘が住む横浜で暮らそうか、いっそ東京に住もうか…など。
 山中湖から横浜に毎日通うことは無理なので。
 
 故郷に帰って暮らすという夢は諦めたが、いまさら首都圏の町なかに住む決心もつかない。
 どう考えても楽しめる気がしない。
 野山を歩き、草や鳥を愛でる楽しみは捨てられない。
 ガンコちゃんも同意見。

 さりとて、死ぬまで山中湖の仮庵で暮らすことも出来ない。
 車を運転しないと買い物にも病院にも行くことが出来ないので、老いれば老いるほど不便が多くなる。
 リゾート生活はリモート生活でもある。
 遊ぶ元気がなくなったリゾート生活ほど楽しくないものもなかろう。

 あれこれと考え抜いて、秦野(はだの)市(神奈川県)内の丘の上に建つ広さ80平米ほどの集合住宅に住むことにした。
 ガンコちゃんと二人で暮らすには十分過ぎる広さかと思う。

 娘のマンションに送ってあるガンコちゃんの布団が活躍する機会を減らす必要もないが、秦野からなら横浜へも電車で毎日でも通える。
 秦野の新居には目と鼻の先にスーパーマーケットがある。
 専門医のいる糖尿病クリニックにも歩いて通える。
 丹沢の山々が眼前にあり、その上には富士山が聳え立つ。
 
 秦野の物件購入の仲介の労を、ふたたび仙台の不動産会社にお願いした。
 お騒がせしたことへの、せめてもの償いに。
 誠意は酌んでいただけたようで、引渡し日(購入代金を支払う日)には社長自ら立会いに来られるという。
 忙しい年末に遠路はるばる。
 恐縮の極みである。
 (どうせなら美人営業ウーマンのKさんにお越しいただきたかったが。)

 年内には横須賀市民から秦野市民になる。
 年が明けたらリフォームだかリノベーションだかにかかる。
 住めるようになるのは桜が咲く頃か。
 秦野は桜が美しい町だ。
 気の合うOさんと鶴巻温泉の湯に浸かるのも楽しみだ。
 …それまでは、おそらくは今年が最後の山中湖の冬を惜しむ。

 山中湖を離れたくはないが、二つのマンションの管理費を払い続けるのは辛い。
 毎年二つ、ときには三つ四つの住居の固定資産税を納める無駄を二十年も続けていることも。
 諸般の事情があってのこととはいえ、身は一つ。
 断捨離は続く。

 ガンコちゃんは今日も横浜に居る。
 しばらくは片道百キロメートルの道のりを行ったり来たりの負担を強いる。
 ずっと娘のところに居てもいいヨと言うのだが、その手には乗らないガンコちゃん。
 私を一人で置くとロクなことをしないと、よく知っている。

 スカイキャンドルが建つ、広瀬川を見下ろす丘に住みたかった…。



 ひょいと暖簾を潜れば吉田類にも出会いそうな (2019.9.29 国分町:宮城県仙台市)


 (2019年12月7日 山中湖にて)


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プロフィール

渡邊むく

Author:渡邊むく
男性。岩手県生まれ宮城県育ち。商社勤務、産業技術英語通訳・翻訳者を経て現在はほぼ引退。愛妻ガンコちゃんと二人暮らし。引越し回数二十六回。現在の主な発信地は東京へも富士山へも約70kmの神奈川県秦野市。俳句は2000年から。リンクはどうぞご自由に。

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