渡邊むく俳句ブログ~まあおたいらに~渡邊むく俳句ブログ~まあおたいらに~ 2019年03月
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雪渓の細き一条富士の紺

梅観(うめみ) / 残る雪 / 花きぶし / 花みもざ / 頬白(ほおじろ)

2019/03/30 Sat


 「風生庵」の雛飾り (2019.3.25 山中湖:山梨県)


 「雛」3月投稿5句


    句仇の湯仲間となる梅観あと

        (くがたきのゆなかまとなる うめみあと)


    松毟鳥しらびその枝に残る雪

        (まつむしり しらびそのえにのこるゆき )


    花きぶし俳句は五玉そろばんと

        (はなきぶし はいくはごだまそろばんと)


    花みもざボンボニエールに収めたき

        (はなみもざ ぼんぼにえーるにおさめたき)


    頬白の声に背筋を意識して /むく

        (ほおじろのこえに せすじをいしきして)



 春兆す (2019.3.29 富士吉田市:山梨県)


 「雛」: 〒155-0033 東京都世田谷区代田6-9-10 雛発行所

 (2019年3月30日 山中湖にて)


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堅香子(かたかご)

2019/03/29 Fri

    花かたかごその径いまだ普請中 /むく

        (はなかたかご そのみちいまだふしんちゅう)



 カタクリの花 (2019.3.18 城山かたくりの里:神奈川県相模原市)


 かたかご(堅香子)とはカタクリ(片栗)のことである。
 そのカタクリの花を見ようと、宮ケ瀬湖から津久井(相模原市)の「城山かたくりの里」へ足を伸ばした。
 もう咲いている頃と勝手に思い込いこんでいて確かめもせずに向かったのだが、園の人によればやっと咲き始めたところだということで、人も多くなかった。

 カタクリの花は少なかったが、サンシュユ(山茱萸)、ダンコウバイ(檀香梅)、ヒュウガミズキ(日向水木)、ミツマタ(三椏)、河津桜、梅、ボケ(木瓜)、コブシ(辛夷)など、ほかの春の花々に十分に癒された。
 
 よく手入れが行き届いた園であることにも感心させられた。
 「城山かたくりの里」は個人が所有する山林で、カタクリの花が咲く春だけ一般に開放されているという。
 今ごろはすでに満開を迎え、大勢の人で賑わっているに違いない。



 カタクリの花 (2019.3.18 城山かたくりの里:神奈川県相模原市)


 子供の頃を過ごした家の周りにはカタクリの花がよく咲いていた。
 当時はスミレなどと同じぐらい身近な野の花だった。

 あれから幾星霜、カタクリの花を久しく見ていなかった。
 あのみちのくの郷ですら、今ではそうたやすく見ることが出来なくなっているのだろうか。

  もののふの八十をとめらが汲みまがふ寺井のうへのかたかごの花/大伴家持(万葉集)



 サンシュユの花 (2019.3.18 城山かたくりの里:神奈川県相模原市)



 アカバナミツマタ (2019.3.18 城山かたくりの里:神奈川県相模原市)



 ヒュウガミズキの花 (2019.3.18 城山かたくりの里:神奈川県相模原市)



 ボケの花 (2019.3.18 城山かたくりの里:神奈川県相模原市)


 「どちらからお越しですか?」
 かたくりの里を出る際に、園の方にそう訊ねられた。

 「横須賀からですが、これから道志みち(国道413号線)を通って山中湖へ行きます。」
 「道志みちは去年の台風で崩落した箇所の補修工事がまだ終わっていないかもしれません。
 一旦復旧して、それからまた崩落がありました。」
 と、ていねいに迂回路まで教えてくださった。

 園を出発する前に駐車場でタブレットを開いて調べてみると、たしかに道志みちは一部がいまも(3月末まで)通行止めとなっていた。
 不案内な迂回路を辿るよりはと、高尾山インター(八王子市)に向かい、そこから中央道に乗った。
 大月、富士吉田を回って山中湖へ。
 思わぬハプニングだったが、教えていただいて助かった。

 それにしても、道志みちは来年のオリンピックの自転車競技(ロード)のコースになっているはずだが…。
 競技を開催出来なくなっては一大事と、大掛かりな補修工事を行うことになったのだろうか。

 オリンピックの自転車競技は、男女とも武蔵野の森公園(東京)からスタートして、道志みちを通って山中湖へ出、富士山周辺を走ったあと、富士スピードウェイ(静岡県小山町)でゴールする。
 男子と女子とでは走行距離が違うが、スタート地点、ゴール地点は同じである。
 高低差が激しく、想像するだに厳しいレースのようだ。
 オリンピック競技の全種目の先頭を切って大会初日から行われる。
 テレビの前の前の世界中の人々に、まず日本の富士山をお目にかけようという趣向のようだ。


 (2019年3月29日 山中湖にて)



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花辛夷(はなこぶし) / 春鴛鴦(はるおしどり)

2019/03/27 Wed

    一村のダム湖となりて花辛夷

        (いっそんのだむことなりて はなこぶし)


    梓弓春の鴛鴦こそばゆし /むく

        (あずさゆみ はるのをしどりこそばゆし)



 宮ケ瀬ダム (2019.3.18 相模原市:神奈川県)


 宮ケ瀬湖に足を伸ばしてから山中湖へ。
 たまには違う道をとは前々から思っていたのだが、ガンコちゃんが「宮ケ瀬湖にはオシドリ(鴛鴦)がいるらしい」と言うので。

 神奈川県愛甲郡愛川町、同郡清川村、相模原市緑区の3市町村にまたがる宮ケ瀬湖は、中津川を堰止めて1998年に完成(ダムは2000年に完成)した歴史の新しい堰堤(えんてい)である。
 神奈川県の主力水源の一つで、私が住む横須賀市の上水道も、一部はこの宮ケ瀬湖に依っている。

 オシドリは冬の季語。
 「やかな屋」(俳句を詠む人のこと)の私には、すでに季を逸したオシドリ観察はイマイチ気乗りしないことだった。
 春でも花筏とオシドリならまだしも、と。

 だいたい、わざわざ何でオシドリなの?
 いつも多くは語らないガンコちゃんだけに、「なんかの当てつけかな?」と、私はすぐに不安が募る。

 


 ハクモクレン (2019.3.18 相模原市:神奈川県)



 コブシの花 (2019.3.18 相模原市:神奈川県)


 やれモクレン(木蓮)だ、やれコブシ(辛夷)だと立ち止まってばかりいる私を置いて、どんどん先を行くガンコちゃん。
 やがて湖畔から引き返してきた。

 「オシドリはいたの?」
 「いたけど遠くて、暗かった。」

 遠くて暗かった…という絶望的な言葉にギョッとしながら、出来るだけ平静を装う私。
 「オシドリは写真のモデルさんじゃないからなぁ」と、つい我ながらそっけなく呟いてしまった。



 オシドリ (2019.3.18 相模原市:神奈川県)


 さあ大変。
 よけいにガッカリ顔になってしまったガンコちゃんを、「見られただけでもラッキーだよ」と慰めたり励ましたり。

 私もたくさんシャッターを切ったが、遠いものは遠く、暗いものは暗い。
 ということで、恥ずかしながら証拠写真の一枚。

 あれから一週間。
 ガンコちゃんと私のオシドリを巡る会話はまだ終わっていないが、話をし向けているのは専ら私のほうかもしれない。
 「春のオシドリは桜前線を追って北上するのではないかな」などと与太を飛ばしたりして。

 あまり話題にすると藪蛇になったりもする。
 私の“引っ越し病”はオシドリのように毎年相手を変えられないストレスのせいだとか。
 いいところを突いている…と、思わず膝を打って頷きそうになった。
 あぶない、あぶない。

 オシドリ、ぜひ明るい日射しのもとで間近に立って観察したいものだ。

    うつりすぐ善女善男鴛鴦(おし)の水 /飯田蛇笏

    思羽(おもいばね)いとしや老の書にはさむ /山口青邨


 (2019年3月26日 山中湖にて)



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ユキヤナギ(雪柳)

2019/03/25 Mon


 ユキヤナギ (2019.3.13 参宮橋:東京)


 ユキヤナギ(雪柳)は好きな花だ。
 この花が咲くと確実に春になったという実感が湧いてくるから。

 そんな思いを抱く花は人によって異なるのだろう。
 たとえば、それはジンチョウゲ(沈丁花)であったりもするかもしれない。
 きっとそれは、その人の好みも反映するのだろう。

 咲く時期はユキヤナギより遅いが、コデマリ(小手毬)も好きだ。
 活け花になったときのカスミソウ(霞草)も好きだ。
 …と書くとなにやら共通性も見えてきて、性格分析の対象にされそうだから、この辺で止めておこう。

    あと戻りしない約束ゆきやなぎ

    子のいつも握手して行くゆきやなぎ /むく(旧詠)


 (2019年3月25日 山中湖にて)



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頬白(ほおじろ)

2019/03/24 Sun


 ホオジロ (2019.3.10 山中湖:山梨県)



    頬白の聞こえて背筋伸ばしけり /むく

        (ほおじろのきこえて せすじのばしけり)


 (2019年3月24日 山中湖にて)



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ミモザ

2019/03/21 Thu


 ミモザ (2019.3.13 代々木公園:東京)



    花ミモザ巴里のみやげの砂糖菓子

        (はなみもざ ぱりのみやげのさとうがし)


    花みもざボンボニエールに収めたき

        (はなみもざ ぼんぼにえーるにおさめたき)


    花ミモザ亡き王妃へと捧ぐ杯 /むく

        (はなみもざ なきおうひへとささぐはい)


 (2019年3月21日 山中湖にて)



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鶯(うぐいす) / 花木五倍子(はなきぶし)

2019/03/20 Wed


 山中湖村村営温泉「紅富士の湯」からの富士山眺望 (2019.3.13 山中湖:山梨県)


 遊んでばかりいる山中湖暮し。
 と言っても特別なことをしている訳ではない。
 せいぜい、野鳥を観ながら散歩をしたり写真を撮ったりで、それにガンコちゃんは絵を描いたり、私は俳句を詠んだり。
 もっぱら怠惰な時間、無為なる日々を楽しんでいるのだが、時にはそんな生活が苦痛になることもある。



 山中湖村の雛祭は月遅れで4月に (2019.3.13 山中湖:山梨県)


 ある日、「浦島太郎になりそう」とガンコちゃん。
 「あなたは浦島太郎ではなく“お雛さま”です」と混ぜ返したが、彼女の気持はよく分かる。
 浮世離れし過ぎて“浦島ボケ”しそうだとは私もときどき思う。

 幼な児のようにひたすら無心に遊ぶという簡単そうなことが、大人にはむずかしい。
 (老人も、幼児返りしない限りはまだ大人なのだ。)

 老後すなわち老境を生きる心には段階があるように思う。
 日々自覚して暮らしていることではないが、私はいまその一つのステージから次のステージに向かっているところ。
 (何がどう変わってゆくステージなのかという説明は省く。)

 言い方を変えれば、私は死ぬまで発展途上人なのだ。
 発展途上のまま幼児返りしたら即身成仏したと思ってもらおうか。

 もっと諦めの良い人間になって往生際を良くしたいものだ。

 …くだらないことを書いた。
 きのうまで、1週間ほど横須賀の自宅に戻っていた。

 山中湖から篭坂峠を越えて御殿場に出ると、梅や菜の花が咲いていた。
 3月ももう中旬だから当たり前のことだが、まだ木の芽もろくに出ていない山中湖から突然出てみると、まるで別世界に迷い込んだようで、しばらくは言葉も出ず、ただ呆然となった。
 やっぱり浦島太郎だ。



 原宿駅前のコブシの花 (2019.3.13 原宿:東京)


 湘南には早咲きの河津桜が多いが、どこの河津桜もすでに見ごろを過ぎようとしていた。
 妣たちのそれぞれの墓にもお詣りしてきた。



 お色直しが進む国立代々木競技場 (2019.3.13 代々木:東京)


 3ヶ月ぶりに東京の吟行会にも参加した。

 東京にばかり富が集中する流れ、力づくでも変えるべきだろう。
 たとえば、東京都知事はもっとも貧しい県の県知事を兼ね、都とその県が予算をシェアすることを法制化するとか。

 東京都で使われる電力は、消費される米や野菜は、どこで作られているのかな?
 札束で貧しい者に言うことを聞かせるのが正義であるかのような世の中、永遠に変わらないものなのだろうか?



 河津桜 (2019.3.13 参宮橋:東京)



    鶯のこゑ染みわたる小谷戸かな

        (うぐいすのこえしみわたる こやとかな)


    花きぶし俳句は五玉そろばんと /むく

        (はなきぶし はいくはごだまそろばんと)


 (2019年3月19日 山中湖にて)



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春めく

2019/03/11 Mon


 浅春 (2019.3.9 山中湖:山梨県)


 地元の人々も驚くほど、富士山も富士山北麓も降雪が少なかった今年の冬。
 山中湖からは見えないが、富士吉田のほうへ回ると富士山の山襞には農事の春を告げる雪形の「農鳥」(のうとり)が見える。
 今冬は例年にない暖冬で、その農鳥がだいぶ早く見えだしてほとんど隠れることがなかったようだ。
 富士吉田市はこの早すぎる農鳥の出現に困惑し、「農鳥宣言」の発表を長いこと保留していた。
 もう発表したのだろうか。
 鳥の鳴き声はすでに春になった。

 


 エナガ (2019.3.9 山中湖:山梨県)


 エナガ(柄長)も活発に飛びまわるようになった。
 毎日どこかでエナガの群を見かける。



 エナガ (2019.3.9 山中湖:山梨県)


 エナガの他には、シジュウカラ(四十雀)の囀(さえず)りも高らかになった。
 ホオジロ(頬白)の美声もよく目立つ。
 アオゲラ(青啄木鳥)かアカゲラ(赤啄木鳥)か、朝起きて窓を開けると高速のドラミングが小気味よく聞こえてくる。
 巣穴を彫っている音のように思えるが、確かではない。



 サルオガセ (2019.3.10 山中湖:山梨県)


 樹々がいっせいに芽吹くのはもう少し先のようだが、ぼつぼつ芽吹きだした木もある。
 山のヤナギ(柳)は銀鼠(ぎんねず)の芽を吹き出したし、カエデ(楓)の繊細な梢も血管のように赤らみはじめた。
 雑木の枝や落葉松の枝にふんわりとサルオガセ(猿尾枷)が生えているのも春らしい。
 マンサク(金縷梅)だろうか、福寿草が咲いている山荘の庭の小木に、今日は黄色い花の蕾が覘いていた。

 あたたかい湘南ではレンギョウ(連翹)なども咲きだしたらしい。
 いつも、山中湖と横須賀とでは一ヶ月ほど季節が違うように感じられる。
 そろそろ、いちど横須賀に帰らなくては。

 


 ホオジロ (2019.3.10 山中湖:山梨県)



    春めくや落葉松の枝に霧藻生ふ /むく

        (はるめくや からまつのえにきりもおう)


 (2019年3月11日 山中湖にて)



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公魚(わかさぎ)釣り

2019/03/10 Sun


 ワカサギ釣りの屋形舟 (2019.3.7 山中湖:山梨県)


 「紅富士の湯」の温泉から出てロッカー室で着替えをしていると、中年の男性が一人、通路に身を屈めて所持品をデイパックにしまっていた。
 低山登りの帰りの人だろうか。

 見ると、デイパックの上からアンテナのような棒状の金属が突き出しているので、何だろう…と怪訝に思って男性に訊ねてみた。
 「ラジオのアンテナですか?」
 「いえ、釣竿です。」
 「えっ、釣竿ですか?
 ずいぶん小さいんですね。」
 「公魚(わかさぎ)釣り用の釣竿です。」
 「湖岸で釣ってらしたんですか?」
 「いえ、舟です。
 湖岸は浅すぎて公魚は釣れません。」

 私は釣りが苦手で、海の町横須賀に二十年近く住んでいながら、まだ一度も釣竿を手にしたことがない。
 そんな釣り音痴の私だから、公魚の釣り方など知ろうはずがない。
 初めて耳にする話を、ただ感心しながら聞いた。

 それから数日後、甲府に観梅に行ってきた後の山中湖の句会で、「次は屋形舟で公魚釣りをしましょう」という話が持ち上がった。
 折角の企画ではあるが、自分で餌もつけることが出来ないのでは釣りを楽しむどころではない。
 「いやぁ、釣りは苦手で、舟にも弱くて」とお誘いを断るきっかけを探った。

 そこへ、ふと「紅富士の湯」で出会った釣帰りの中年男性の姿を思い出した。
 「あんな可愛いらしい竿に着けた糸をたらたらと湖に垂らすだけの釣りなら、出来ないこともあるまい」と思った。

 悪魔の誘惑とはこういうことを言うのだろう。
 つい口が滑った。
 「公魚釣り、いいですねぇ。
 家内も誘ってみます。
 餌をつけて欲しいので。」
 
 その日は未明から雨。
 普段よりだいぶ早い朝食を摂りながら、「中止にならないかな」とぼやく。
 「魚は水の中にいるんだから雨なんて関係ないわよ」と薄情なガンコちゃん。
 一緒に行こうと何度も誘ったのに、「舟に弱いからダメ」の一点張りでにべもない。
 苦手な餌つけを代わってしてくれることを当てにしていたのに、どうしてくれるんだ。

 船酔いしたときの用心のためにビニール袋も3枚持って、湖畔の舟着き場までガンコちゃんに車で送ってもらう。
 「一緒に舟に乗ろうよ」と未練がましくもう一度翻意を促したが、徒労に終わった。

 集まった句友は6人。
 舟にはすでに十人ほどの釣人が乗っていて、みな低い椅子に腰を下ろしていた。

 午前7時。
 富士山もまったく見えず、湖も空も混然となってけぶる雨の中を、何もかもが初めて尽くしの私を乗せて、舟が湖岸を離れた。

 * * * * *


 隣合わせたベテラン (2019.3.7 山中湖:山梨県)


 ポータブル魚群探知器まで装備のこだわり様。
 二刀流の使い手で、釣果は群を抜いていた。



 床板を開けると船底に湖水が覘く (2019.3.7 山中湖:山梨県)



 私の釣竿 (2019.3.7 山中湖:山梨県)


 針に公魚がかかると薄い金属板の竿の先端が引かれて撓む。
 釣っているあいだはその先端部に眼を凝らす。
 (写真を撮るために竿を台の上に置いたが、実際は竿を手に持って釣る。
 公魚は湖底のごく近くにいるので、錘が湖底に着くまで糸を下ろしてから少しだけ上げて止めておく。
 針の数は5本。
 針はそれぞれ水深が少しづつ違う位置についている。
 公魚は小さいので、手ごたえは全くない。
 リールなどを使わない昔の釣り方では手ごたえを感じることが出来たという。

 


 最初に釣れた一尾 (2019.3.7 山中湖:山梨県)


 一度に3尾釣れたこともあった。


 その夜の天ぷらになった釣果 (2019.3.7 山中湖:山梨県)


 Eさんのお奨めにしたがって、天ぷらは①水洗いした公魚に②小麦粉をまぶし、③薄く溶いたてんぷら粉をつけて揚げ、④レモンを絞って塩をつけていただいた。

 公魚釣り、楽しく貴重な体験をさせていただいた。
 先日の探梅といい、山中湖の句友のみなさんには新参者の私にいつもお気遣いをいただき、深く感謝している。

 山中湖の公魚釣りは1月頃に始まって5月頃まで続くが、3月の今が旬のようである。

      公魚釣る真白き富士をまなかひに /嶋木勝次郎


 (2019年3月10日 山中湖にて)



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2019/03/09 Sat

    句仇の湯仲間となる梅観あと /むく

        (くがたきのゆなかまとなる うめみあと)



 コゲラ (2019.2.23 山中湖:山梨県)


 坊ちゃん

 山中湖の寓居があるマンションの大浴場が平日で休みのときは、二つある村営の日帰り温泉の一つ「紅富士の湯」に通う。
 よい退屈しのぎであり、面倒というよりはむしろ楽しみにしている。
 冬期の週末限定ではあるが早朝も営業していて、屋内の湯からも露天の湯からも文字通りの紅富士を目交(まなか)いに出来る。

 先日、その露天の湯で髭を剃っている日本人らしきご同輩がいた。
 無神経極まりない。
 咄嗟に注意しかけたが、深く息を一つ吐いて思いとどまった。

 こういうことになると黙っていられない性分なので言葉を呑み込むのは死ぬほど辛いが、家の中でよろめいたはずみに折った肋骨が治っていないことを思い出したからである。
 注意してトラブルになり、着きかけた骨がまた剥がれたり重ねて骨を折ったりすればまるで漱石の「坊ちゃん」だが、いくら向こう見ずでも70歳の「坊ちゃん」もあるまい、と無理やり自分を説き伏せた。

 そのことを、あとで従業員の一人に報告した。
 その従業員には「日本人でしたか?」と訊ねられた。
 どう考えても海外からの旅行者には思えなかったので、「そのように見えました」と答えておいた。
 が、報告したからどうなるというものでもない。
 やっぱりその場で注意すればよかった…と、いまだに忸怩(じくじ)たる思いでいる。



 コゲラ (2019.2.23 山中湖:山梨県)


 (2019年3月9日 山中湖にて)



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プロフィール

渡邊むく

Author:渡邊むく
産業技術英語通訳・翻訳者。男性。岩手県生まれ宮城県育ち。人生の大半は首都圏暮し。海外生活約10年。俳句歴:2000年より。主な発信地:神奈川県横須賀市、山梨県山中湖村。

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