渡邊むく俳句ブログ~まあおたいらに~渡邊むく俳句ブログ~まあおたいらに~ 2017年11月
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航跡もイルカの群も夕焼ける

野うさぎ

2017/11/16 Thu

    野うさぎや湯煙しるくなる朝 /むく

         (のうさぎや ゆけむりしるくなるあした)




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冬初め

2017/11/15 Wed

    大きめのリュックを求む冬初め /むく

         (おおきめのりゅっくをもとむ ふゆはじめ)



 今日かと思った宅配便、届くのは明日になるらしい。


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初時雨(はつしぐれ) / 霧

2017/11/14 Tue

    初しぐれ日々に電話はするものの

         (はつしぐれ ひびにでんわはするものの)

 追記: 元の句「初時雨るす守る妻に甘えゐて」を推敲。(2017.11.16)


    茶がうまくなるとは一茶霧おりる /むく

         (ちゃがうまくなるとはいっさ きりおりる)

 追記: 元の句「茶の甘くなるや一茶の霧こもる」を推敲。(2017.11.16)



      初時雨猿も小蓑を欲しげなり /芭蕉

 「子猿」ではなく「小蓑」。
 「こ」の置きどころが鋭い。


      朝々や茶がむまく成る霧おりる /一茶

 茶どころに居を構えなければ知り得なかった感懐。

 世界中どこでも、茶の栽培が盛んなところというのは、傾斜のきつい高所など、概して(少なくても歴史的には)、穀類などの主作物の耕作には条件が恵まれていない土地のようだ。
 アッサムもダージリンも同様。



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むささび / 息白し / 富士に雪 / 秋の尾根 / 秋社

2017/11/13 Mon

    しんしんとむささびの啼く山支度

         (しんしんとむささびのなく やまじたく)


    朝富士を見むと立つ丘息白し

         (あさふじをみんとたつおか いきしろし)


    富士に雪オートキャンプの子らの声

         (ふじにゆき おーときゃんぷにこのこらのこえ)

 追記: 元の句「富士に雪オートキャンプの賑はへり」を推敲。(2017.11.14)


    歩一歩身を励まして秋の尾根

         (ほいっぽみをはげまして あきのおね)


    こんにちはこんにちはとて秋の尾根

         (こんにちはこんにちはとて あきのおね)

 追記: 元の句「こんにちはこんにちはとて尾根の秋」を推敲。(2017.11.21)


    秋の尾根ときどき犬を抱き上げて

         (あきのおね ときどきいぬをだきあげて)


    母強し嬰をも負ひて秋の尾根

         (ははつよし ややをもおいてあきのおね)

 追記2: 前句「秋の尾根嬰をも負ひて母強し」を推敲。(2017.11.22)
 追記: 元の句「秋の尾根嬰も負ひたる母強し」を推敲。(2017.11.21)


    一山を無事にくだりて秋社

         (いちざんをぶじにくだりて あきやしろ)


    むささびや山の疲れをさする夜 /むく

         (むささびや やまのつかれをさするよる)



夜明けの富士 (2017.11.12 東山界隈:静岡県御殿場市)



明けゆく富士 (2017.11.12 東山界隈:静岡県御殿場市)



朝富士 (2017.11.12 乙女駐車場:静岡県御殿場市)


 11月12日(日) 晴れ

 6時半近くに家を出て、朝富士などを撮りながら乙女峠へ、それから金時山へ。
 前回同様、箱根側に下りて、公時(きんとき)神社で無事の御礼詣で。
 前回より楽に感じられたのは体力が付いたから…ではなく、一脚兼用のスティックのお陰なのだと思う。
 良い買い物をした、と思っている。
 ときどき置き忘れそうになるので、気を付けなくては。



オートキャンプ (2017.11.12 乙女第2キャンプ場:静岡県御殿場市)



見晴らしが良くなった展望台 (2017.11.12 乙女峠:静岡県御殿場市)


 今回乙女峠に登ったのは、以前「なにも見えない展望台」だと、御殿場市の関係者の皆さんには大変失礼なことを書いたので、お詫び方々、見晴らしが良くなった展望台の写真をご紹介しなくては、と思ったから。
 高木の枝を伐ってくださった市役所の皆さん、ありがとうございました。



乙女峠展望台 (2017.11.12 乙女峠:静岡県御殿場市)



乙女峠から金時山へ向かう尾根道で (2017.11.12 静岡県・神奈川県県境)



金時山山頂 (2017.11.12 静岡県駿東郡小山町)


 頂上に着くと、残念ながら富士山には雲が纏わり、いまいちの眺望。
 辿って来た乙女峠や長尾峠の向こうには愛鷹(あしたか)連山が。(下の写真)
 先日登った越前岳はその右端の山。



乙女峠、長尾峠、その向こうに愛鷹山 (2017.11.12 金時山山頂:静岡県駿東郡小山町)



公時神社 (2017.11.12 神奈川県足柄下郡箱根町)



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野兎(のうさぎ、やと) / 鷲(わし)

2017/11/12 Sun

    夜明け道岳人野兎を驚かす

         (よあけみち がくじんやとをおどろかす)

 追記: 元の句「早起きの岳人野兎を驚かす」を推敲。(2017.11.22)


    富士山の白頭鷲に見ゆる今朝 /むく

         (ふじさんのはくとうわしにみゆる けさ)



朝富士 (2017.11.12 東山界隈:静岡県御殿場市)


 乙女峠、金時山に登って、箱根仙石原まで歩く。
 金時山の山頂に着いたのは午前十時前。
 持って行った特大握り飯は食わず、そのまま山を下りて、仙石原の食堂で昼餉。
 帰りはバス。
 あんなに苦労して登った乙女峠だのに、バスはその下の隧道をあっという間に潜り抜ける。
 卑怯だ。

 途中の「温泉会館前」で下車。
 温泉には寄らず、のんびり歩いて寓居に戻る。
 みかん湯に入ってから体重を計る。
 まったく減っていない。
 20kmも歩いたのに…。
 がっかりしたせいか、缶ビールが効いたせいか、洗濯の途中で寝てしまった。

 続きは他の写真と一緒にまた次回。



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白菜

2017/11/11 Sat

    俳聖の句に白菜のなかりけり /むく

         (はいせいのくに はくさいのなかりけり)



庭もみじ (2017.11.11 東山:静岡県御殿場市)


 もう茄子の季節でもない。
 今朝の味噌汁の具は白菜と油揚。
 富士山も白くなったので、白菜の甘い季節になったかと。

 白菜が日本の食卓に登場するようになったのは明治以降のことだと云う。
 子供の頃から親しんで来たせいか、それを知った今でも、もっと遠い昔からあった野菜のような気がしてならない。

 明治以前の人々にとって、冬野菜の代表は葱と大根であったろうか。
 味噌汁が好きなので、大根の味噌汁は私も作る。
 しかし葱は、鍋料理以外は薬味として使うだけだ。
 江戸時代の人々のように「根深汁」を試してみようか、などと考えたりしている。

    葱白く洗ひたてたる寒さかな /芭蕉

    易水に根深流るる寒さかな /蕪村



今日の富士山 (2017.11.11 東山:静岡県御殿場市)



ハクセイレイ (2017.11.11 東山:静岡県御殿場市)


 ※ リンクに、いつも参考にさせていただいている『芭蕉DB』(伊藤洋さん)を追加しました。


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富士冠雪 / 根雪 / 尉鶲(じょうびたき) / のすり

2017/11/10 Fri

    富士冠雪一気に開ける朝の窓

         (ふじかんせつ いっきにあけるあさのまど)


    今度こそ富士の根雪とならむ今朝

         (こんどこそふじのねゆきとならん けさ)

 追記: 元の句「こんどこそ根雪になるか今朝の富士」を推敲。(2017.11.12)


    加はれり祝ぎの会話に尉鶲

         (くわわれり ほぎのでんわにじょうびたき)

 追記: 元の句「加へけり祝ぎの電話に尉鶲」を推敲。(2017.11.11)


    日燦々のすりの翼ひるがへし /むく

         (ひさんさん のすりのつばさひるがえし)



もみじ (2017.11.9 東山界隈:静岡県御殿場市)


 11月9日(木) 晴れ

 朝起きて窓のカーテンを開けると、今年二度目の富士山の冠雪。
 しまった、もう少し早起きすればよかった。
 御殿場からの富士山の眺めは早朝が一番だと思う。

 ご飯を炊いていなかった。
 袋に半分だけ残しておいた、あまり好きではない冷凍の浅利飯を電子レンジで温める。
 味噌汁はインスタントにして、作り置きの煮物と納豆でそそくさと朝食を摂り、外に飛び出す。

     毛糸編む膝一面の海の色 /同前悠久子 (『枝垂れの桜』:ふらんす堂刊)

 出がけに、初句集をお送りくださった方にお祝いの電話をするが、お留守のようで、またあとで掛け直すことにする。
 わたしが俳句を詠み始めた17年前にインターネット上で知り合い、俳句をいろはから教えていただいた方だ。
 まったく素直ではない私に愛想を尽かすことなく、本当に辛抱強く丁寧にご指導いただいた。
 二度ほどお訪ねもして、その度に、ご友人やご家族とともに過分なご接待をいただいた。
 電話だけでなく、ぜひ足を運んでお祝いを申し上げねば、と思っている。

 


紅葉のゴルフコース (2017.11.9 東山界隈:静岡県御殿場市)


 失礼して、いつものようにゴルフ場内の道を乙女峠を目指して登ってゆく。
 あれほど好きだったゴルフを、御殿場にささやかな庵を構えてからは一度もやっていない。
 寓居はゴルフコースのま隣だし、ゴルフ道具も揃えてあるので、やろうと思えばいつでも出来る。
 が、今日までのところは、ある日ふと目にした「あれもこれも欲しがるなよ」という相田みつをの言葉を守り続けている。
 と言えば聞こえはいいが、欲しくても経済的にも体力的にも余力がない、というのが本当の話ではある。

 今日から「三井住友VISA太平洋マスターズ」が始まる。
 御殿場で開催される、プロゴルフ界の秋の大イベントの一つだ。
 が、大好きな松山秀樹が今年は出場しないということもあって、観戦に行くのを止めることにする。
 その松山が圧倒的な強さを発揮して優勝した去年のトーナメントも、観に行かなかったが。



冠雪富士 (2017.11.9 東山界隈:静岡県御殿場市)



冠雪富士 (2017.11.9 東山界隈:静岡県御殿場市)


 ゴルフ場内の道を登り切ると、その少し先に、ある企業の大型保養所がある。
 富士山絶景ポイントの一つと言って良く、周辺は遊歩道の整備なども徐々に進められている。
 色褪せてしまわないうちにと、冠雪した朝の富士山をカメラに収めたりして遊歩道を歩いていると、電話が鳴った。


ジョウビタキ (2017.11.10 東山:静岡県御殿場市)


 久闊を叙し、句集出版のお祝いを申し上げているところに、尉鶲(じょうびたき)の声が聞こえたかと思ったら、すぐ目の前を過ぎって行った。
 残念ながら電話中でカメラに収めることは出来なかったが、遊歩道でノスリ(鵟)を撮ることが出来た。
 またいつものトンビ(鳶)かな?と半信半疑で撮ったのだが、幸運にもノスリの初撮りとなった。
 (ほとんどピンボケだったが。)



ノスリ (2017.11.9 東山界隈:静岡県御殿場市)



ノスリ (2017.11.9 東山界隈:静岡県御殿場市)



ノスリ (2017.11.9 東山界隈:静岡県御殿場市)


 乙女峠へ登る道で、市民の森やキャンプ場、展望駐車場などを管理している御殿場市の職員や関係の方々に出会い、少しお話をした。
 市役所の職員の方に、以前ブログに「乙女峠の展望台は見晴らしが悪い」と書いたと伝えると、「そういう苦情もあったり、前から伐らなくてはと思っていたので、9月に高木の枝を伐りました」と言って、スマホの写真を見せてくださった。
 枝を伐った後の写真には、見事な富士山の展望が開けていた。
 御殿場市の名誉にかけて、以前の記事には展望が良くなったことを書き加えておかなければならない。



乙女第二キャンプ場 (2017.11.9 乙女峠界隈:静岡県御殿場市)



マユミの実 (2017.11.9 乙女峠界隈:静岡県御殿場市)


 電話で仕事の打ち合わせなどをしながら帰路に。
 遅い昼食を摂りに御殿場温泉に寄って、湯に浸かる
 好天気は明日までということなので、展望の良くなった乙女峠に登りたいところだが、明日は仕事をしなくては。



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木の葉雨 / 菊篭

2017/11/07 Tue

    木の葉雨富士の巻狩跡に井戸

         (このはあめ ふじのまきがりあとにいど)


 鎌倉時代の出来事を記した貴重な史書である『吾妻鏡』には、建久4年(1193年)5月の中ごろから約1ヵ月間にわたって、源頼朝が壮大な富士の巻狩(まきがり)を行ったことが記されている。

 「…その外射手たる輩群参し、勝計うべからず」。(建久4年5月16日)
 鎌倉から頼朝に従って来たり、その他の各地から参上した御家人やその郎党の数は、挙げて数えることができないほどだった。

 頼朝は、富士の巻狩の直前の4月にも、3週間余りにおよぶ巻狩を那須野で行っている。

 「那須野等の御狩り、漸く事終わるの間、藍澤の屋形また駿河の国に運び還すべきの由と」。 (建久4年4月23日)
 藍澤とは、現在の御殿場市内の一角の古い地名らしい。
 小田原へと注ぐ酒匂川(さかわがわ)の上流となる鮎沢川の「鮎沢」は「藍澤」が転じたものであろうか。
 鎌倉から徒歩(かち)で来ると、足柄峠を越え、疲れた脚をやっと伸ばせる辺り一帯が藍澤だったかと思われる。

 辞書によれば、屋形とは公家や武家などが住む館のこととある。
 藍澤から那須野に移築した屋形を、また藍澤に再移築せよということになった、という記述のようである。
 巻狩のためという目的から考えると、この屋形は、現代流に言えば仮設住宅の一種ということになるのだろうか。
 そんな些細なこと(かどうか確証はない)がわざわざ吾妻鏡に記されているのは、それが頼朝自身が起居するための屋形だったからか。
 決して「些細」ではない記すに足る理由が、恐らくはあったのだろう。
 
 壇ノ浦の戦で平家を滅ぼし、義経や奥州藤原氏を討ち、一筋縄ではいかなかった後白河法皇が崩御し、ついに頼朝は征夷大将軍の地位を手に入れる。
 こうして鎌倉に幕府が開かれたとされるのが1192年(建久3年)だから、富士の巻狩はその翌年に行われたことになる。
 巻狩は、将軍家と主従関係を結ぶ「御家人」制度が浸透し、頼朝の覇権が全国に及ぶようになった慶賀のイベントでもあったようだが、政局は、頼朝にとってまだまだ安心出来る状態ではなかったに違いない。
 巻狩は、将軍頼朝の威武を御家人たちに、そして天下に示す意図があって挙行されたとも、また軍事訓練の目的を兼ねて行われたとも言われるのは、その辺の背景も考察してのことだろう。
 ともあれ、富士山山麓の随所に存在する現在の自衛隊演習場の歴史が、あたかも頼朝の富士の巻狩に緒を発しているようにも見えるのは面白い。

 富士の巻狩は藍澤に始まり、場所を西へ移動し、朝霧高原あたりにまで及んだという。
 巻狩は、御家人たちもそれぞれに屋形を造り、遊び女が集められ、酒宴を張りながら進められた。

 吾妻鏡は、富士の巻狩についての話にずいぶん行を費やしている。
 「曽我物語」として知られる曽我五郎・十郎兄弟の仇討の話は、史書と言うより物語調で書かれている。

 吾妻鏡にはこんなエピソードも記されている。

 「若公鹿を獲しめ給う事、将軍家御自愛の余り、梶原の平次左衛門の尉景高を鎌倉に差 し進せられ、御台所の御方に賀し申さしめ給う。
 景高馳参し、女房を以て申し入るの処、敢えて御感に及ばず。
 御使い還て面目を失う。
 武将の嫡嗣として、原野の鹿鳥を獲ること、強ち希有と為すに足らず。
 楚忽の専使頗るその煩い有るか。
 てえれば、景高富士野に帰参し、今日この趣を申すと。」


 頼朝の嫡男頼家(12歳)が鹿を射止めたことを頼朝がたいそう喜び、御家人の梶原の平次左衛門の尉景高を、御台所(政子)にお祝いを伝えに行かせた。
 女官を通して伝えたところ、御台所は気に召さなかった。
 せっかくの使者が面目丸つぶれである。
 曰く、「そんな他愛もないことでいちいち遣いなどよこすんじゃないの。
 迷惑なだけよ。
 武将の嫡男なら、野原の鹿を射止めることぐらい当たり前の話です。
 それを何よ、大騒ぎして使者だなんて。
 呆れてものも言えません。
 帰って主人にそう伝えてちょうだい。」
 富士野に戻った景高は、そのことを頼朝に伝えた…というのである。
 さすがは女帝として名高い政子らしいエピソードと言えようか。

 「そんな見え透いたおべんちゃらを真に受けて目を細めているなんて、情けない。 
 人の本心は言葉とは違うのよ。
 ”さすがは殿のお子でござる”なんてお世辞を言われて、調子を合わせて喜んでいる貴方は、内心、「所詮そんな器量か」と軽く見られているのよ。
 先が思いやられるわ。
 いったい、何のための巻狩ですか?
 しっかりしてちょうだい。」
 そんな真意を汲み取って、頼朝は冷や汗を掻くやら、妻の傑物ぶりに改めて舌を巻くやらしたのではあるまいか。

 富士の巻狩は、一昨日愛鷹山(あしたかやま)に登りに行った十里木(じゅうりぎ)一帯でも行われたようだ。
 十里木のバス停近くの林に、巻狩のときに頼朝が喉を潤したと伝えられる「頼朝の井戸」(下の写真)がある。



頼朝の井戸 (2017.11.4 十里木:静岡県裾野市)



頼朝の井戸の碑 (2017.11.4 十里木:静岡県裾野市)


 頼朝の井戸からニ、三十歩離れた場所に、句碑が一つ建っていた。

     ほととぎす朝は童女も草を負ふ /水原秋櫻子


 看板には、秋櫻子が主宰を務めた結社『馬酔木』の十里木吟行会での詠と説明が添えられていた。
 秋櫻子句の碑の前に立っていると、なぜか那須野で詠んだ芭蕉の句が思い出されて、味わいの違いを対比してみたりもした。

     秣負ふ人を枝折の夏野かな /芭蕉

    


水原秋櫻子句碑 (2017.8.5 十里木:静岡県裾野市)



    麓まで菊篭を負ふ人の後 /むく

         (ふもとまで きくかごをおうひとのあと)



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紅葉(もみじ)

2017/11/05 Sun

    山遊び野点の背に富士紅葉 /むく

         (やまあそび のだてのせなにふじもみじ)


富士山裾野の紅葉 (2017.11.4 愛鷹山:静岡県裾野市)



富士裾野の秋 (2017.11.4 愛鷹山:静岡県裾野市)



 11月4日(土) 晴れ

 愛鷹(あしたか)連山の越前岳に登った。
 平日のうちに登るつもりだったが、仕事に追われて今日になってしまった。

 出がけに人と話し込んだりして、本数の少ない御殿場駅発十里木(じゅうりぎ)行きのバスに危うく乗り損ないそうになった。
 駅の売店で昼食と飲み物を買うつもりだったが、そんな暇もない。
 終点の十里木でバスを降りてから、自動販売機で飲み物だけ買った。

 越前岳は海抜1504メートルの山だが、登り始めた十里木登山口の標高が885メートルほどなので、実際の標高差は6百メートル強しかない。
 が、登り始めてすぐに早くもバテる。
 これまでにないほど脚が重い。
 Gパンのせいか、その下に穿いたスパッツのせいか。
 いや、何よりも身体が鈍(なま)ったせいだろう。

 半分登ったあたりにある馬の背見晴台で一息入れながら、無理はせず、今日はここで引き返そうかと思う。
 体調が不十分であることは重々承知の上でやって来たのだ。

 しかし、今日登れないと「登れなかった」ことがトラウマとなって、次の目標も遠のくことになりそうだ。
 登れるところまで登ろう…と、何度も休みながらゆっくり登った。
 4、5歳の子供にも追い越され、犬を抱いて登る人にも先を越され、誰よりも遅いペースで。

 何がどうしたか分からないが、次なる目標地点を二つほど見逃してしまって、気が付けば、いつの間にか頂上に辿り着いていた。
 見かねた山の神様が助けてくれたのに相違ない。

 私を追い越して行った人たちや、「愛鷹山登山口」でバスを下りて黒岳のほうから登ってきた人たちが、頂上のあちこちで弁当を広げている。
 3連休の中日ということもあってか、若い人たちの姿が目に付く。

 時計を見ると正午を2、3分回ったところ。
 2時間20分ほどで登った計算だ。
 どこかに2時間半が標準所要時間と書かれていたように思う。
 寛大な標準時間ではあるとしても、大勢の人に追い越されながら登ったので、それほどの遅れでもなかったことに我ながら驚く。
 それにしても、皆さん健脚でいらっしゃる。

 他人が弁当を食べているのを見ていると腹が減りそうだ。
 頂上付近を少しうろついて、元来た道を引き返す。
 次は別のルートから登りたいものだと思いながら、ゆっくりと馬の背見晴台まで下りて、一息入れる。

 「よかったらお茶…はいかがですか?」
 と声をかけて下さったのは、50歳前後の2人連れの女性。
 何か召し上がっておられたご様子。

 「ありがとうございます。
 食べるものを持たずに登ったので、嬉しいです。」

 「いえ、食べ物じゃなく、お茶だけです。」
 「えっ、てっきりお茶漬かとばかり…。」

 「お抹茶です、これから立てます。」
 「えっ、抹茶を立てるんですか、山登りに来て?」
 「はい、よくそうして楽しんでいるんですの。」

 拝見していると、リュックから抹茶用の大ぶりの茶わんや茶筅(ちゃせん)などの茶道具を、手品のように次々と取り出す。
 こんなに重い物まで背負って山に登ってきて、この余裕…と、ほとほと感心してしまう。

 切り分けた羊羹と温めの抹茶を、ありがたく頂戴する。
 「いやぁ、山登りに来て野点(のだて)にお誘いいただくとは思いもしませんでした。
 最高の偶然で、しかも床の間に富士山と紅葉を飾ってだなんて、冥利に尽きます。」

 実際、疲れが一遍に吹き飛んだ。
 それぞれ、富士市と富士宮市から来られたという二人の佳人。
 ありがとうございました。

 こんな楽しい出会いが待ち受けていると分かっていたら、もう少し元気な顔を用意しておくんだった。
 …また、ガンコちゃんにお灸を据えられるだろうなぁ。



越前岳山頂 (2017.11.4 愛鷹山:静岡県裾野市)



越前岳頂上からの富士山 (2017.11.4 愛鷹山:静岡県裾野市)



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菊の酒

2017/11/04 Sat

    水音の貴船めきたり菊の酒 /むく

         (みずおとのきぶねめきたり きくのさけ)



 菊酒は五節句の一つである重陽(ちょうよう)に、健康や長寿を祈って飲むもの。
 重陽は旧暦の9月9日で、今年は新暦の10月28日だった。
 菊の節句とも呼ばれる。
 その重陽の節句、今年は気にも留めないまま過ぎてしまった。

 しかし、たとえ重陽の節句は忘れても、この季節になると菊膾(きくなます)や菊酒はふと恋しくなる。
 そして、恋しくなるのは大抵が文化の日である。

 文化の日の昨日、スーパーに行って食用菊を探したが、ない。
 やっぱり、重陽の前でないと売っていないのだろうか。
 しかたなく、つま菊が載った刺身を買ってきて、つま菊だけ洗って、花びらを千切って酒に浮かべた。
 つま菊も食用菊ではあるが、数枚の小さな花びらを浮かべただけでは味も匂いもしなかった。

 夜ではあったが居間の掃出し窓を開け放ち、灯りに映る楓紅葉を眺めつつ、足柄の沢の水音を聞きながら戴いた。

 子供の頃、菊膾は苦手だったが、菊の天ぷらは好きだった。
 母が作ってくれたものだ。
 揚げ物は美味しいが、健康のために控えるようになって久しい。
 が、菊の天ぷらを目の前に出されたら、箸を出さずにはいられないことだろう。



菊酒 (2017.11.3 東山:静岡県御殿場市)



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プロフィール

渡邊むく

Author:渡邊むく
男性。岩手県生まれ宮城県育ち。商社勤務、産業技術英語通訳・翻訳者を経て現在はほぼ引退。愛妻ガンコちゃんと二人暮らし。引越し回数二十六回。現在の主な発信地は東京へも富士山へも約70kmの神奈川県秦野市。俳句は2000年から。リンクはどうぞご自由に。

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