灯籠や今も引揚桟橋と むく

鹿の声

2017/08/06 Sun

    たじろげり鹿の尻声とは知らず /むく

         (たじろげり しかのしりごえとはしらず)

 推敲: 元の句「たじろげり鹿の尻声知らずして」を推敲。(2017.8.9)



愛鷹山遠望 (2017.7.15 足柄峠:静岡県駿東郡小山町)



御山が見えない裾野の景色 (2017.8.3 越前岳(愛鷹山)登山道:静岡県裾野市)


 8月3日 越前岳登山 (2)

 十里木高原の愛鷹山登山道入口から越前岳を目指す。
 登り始めてほどなく、一人で下山してくる三十代ぐらいの男性に遇う。
 「道はどうでしたか?」と訊ねる。
 「ぬかるところもありましたが、大丈夫です。」
 心強いひと言。

 雨上がりの濡れた土に、人の足跡に混じってけものの足跡やけもののものらしい真っ黒な野太い糞が。
 鹿の糞ではない。
 猪か熊か…。
 緊張が走る。
 道を進むにつれて、けものの臭いも漂ってきた(気がする)。

 電波塔から馬の背展望台を目指していると、近くの笹むらの中から「ヒー!」という鋭い音が。
 けものの声らしい。
 さわさわと笹の擦れる音がする。
 けものが動いたようだ。
 一声だけで、それきり啼き止んだ。

 熊ではなさそうだ…猪か?
 一人歩きが心細くなる。
 進もうか、引き返そうか…と立ち止って思案する。
 さっき見たけものの糞を思い出す。
 無理はすまい…と引き返すことに。

 少し下ったところで、一人で登って来る七十才前後の男性に遇う。
 「それは鹿の声でしょう。
 鹿は人間を襲ったりしません」と。
 ホッとして、再び登ることにする。

 馬の背展望台まで、その人と一緒に登る。
 かなりの健脚ぶりである。
 富士市にお住まいと言うその人は、この愛鷹山に年間二百回ほど登ると言う。
 「運動のために来ているので、いつも頂上まで登るわけではありません。
 知合いの登山者も多くいますが、熊に遇ったという人は誰もいません。
 下の案内板に「熊出没注意」の張り紙がありましたね。
 駐車場横の草原に出たそうですが、おそらく迷い熊でしょう。」
 
 馬の背展望台でその人と別れ、ふたたび一人で頂上を目指す。
 道が険しくなる。
 平地よりはだいぶ開花が遅く草丈も低いシモツケソウ(下野草)の薄紅色の花が、勾配を登る鼻先にくっつきそうになる。
 山毛欅(ぶな)の木が多い木の根道と角の鋭い岩の道が続く。

    びいと啼く尻声悲し夜の鹿 /芭蕉

 つづきは次回記事で。





色づき始めたガマズミの実 (2017.8.3 越前山(愛鷹山)登山道:静岡県裾野市)


シモツケソウ (2017.8.3 越前山(愛鷹山)登山道:静岡県裾野市)



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夏山 / 山登り / 山百合 / 茂り

2017/08/04 Fri

    夏山へ富士晴れぬ日と思ひつも

         (なつやまへ ふじみえぬひとおもいつも)


    山ひとつ登りて偲ぶ古き世々

         (やまひとつのぼりて しのぶふるきよよ)

 追記: 元の句「山ひとつ登りて惜しむ命はも」を推敲。(2017.8.6)


    山百合や十里木関所址とあり

         (やまゆりや じゅうりぎせきしょあととあり)


    愛鷹山の杉万本の茂りかな /むく

         (あしたかのすぎ まんぼんのしげりかな)



十里木バス停 (2017.8.3 十里里高原:静岡県裾野市)


 8月3日(木) 曇り。

 雨は止みましたが、まだ空一面に低い雲が垂れ込め、富士山は麓しか見えません。

    霧しぐれ富士を見ぬ日ぞ面白き /芭蕉

 在るはずのところに姿が見えない富士山を芭蕉は「面白い」と詠みましたが、これから夏富士の眺めの良い山に登ろうという今の私には、なんとも間の抜けた景色です。
 間が抜けているのは、わざわざこんな日を選んで山に登ろうという私自身なのですが。

 道志連山の青嶺も中腹から上は見えず。
 丹沢山塊も、箱根連山も、愛鷹(あしたか)連山も同様。

 きょう登ることに決めたのは、その愛鷹連山の最高峰である越前岳。
 おとといまでは金時山に登る計画だったのですが、「行ったことのないけもの道を通って…」とブログに地図を掲載したところ、「熊が出るからダメ、夏山は低山が危険!」と、ガンコちゃんに猛反対され、やむなく予定を変更したのです。

 「愛鷹山」と言うのは大いに通称のところがあって、愛鷹連山の中の一峰である愛鷹山を云う場合もあるし、また愛鷹連山全体を云う場合もあります。
 愛鷹連山は愛鷹山(1,187.5m)のほか、越前岳(1,504.2m)、黒岳(1,087m)、前岳(1,336m)、大岳(1,262m)、鋸岳(1,296m)、袴腰岳(1,248m)、呼子岳(1,310m)、位牌岳(1,458m)などで構成されています。
 富士山が出来る前はこの愛鷹群山が噴火火山で、火口が次第に移動して噴火を繰り返して富士山が生まれ、さらに時を経て現在の地形になったのだそうです。

 富士山が噴煙を上げていた頃を偲ぶものとして、万葉集の中にある高橋虫麻呂という人のこんな長歌(ちょうか)をご紹介します。(万葉集 3-320)


 なまよみの甲斐の国
 うち寄する駿河の国と
 此方此方(こちごち)の国のみ中ゆ
 出で立てる不尽の高嶺は


 (なまよみ*の甲斐の国と
 うち寄する**駿河の国の、
 その二つの国の真ん中に、
 聳え立つなり、富士の高嶺は。)

  * なまよみ: 甲斐の枕詞。
  ** うち寄する: 駿河の枕詞。


 天雲(あまくも)もい行きはばかり
 飛ぶ鳥も飛びものぼらず
 燃ゆる火を雪もち消ち
 降る雪を火もち消ちつつ


 (空の雲もその前を行きはばかり、
 飛ぶ鳥もその頂まで飛び上がれず、
 燃える火を雪をもって消し、
 降る雪を火をもって消し続けている。)


 言ひも得ず名付けも知らず
 霊(くす)しくもいます神かも


 (言葉で言い表すことも喩えることもできない、
 まさに霊妙そのものにおましますなり、神は。)


 石花海(せのうみ)と名付けてあるも
 その山の堤(つつ)める海ぞ
 富士川と人の渡るも
 その山の水の溢(たぎ)ちぞ


 (石花海*と名付けてあるのも、
 その山が塞き止めた湖である。
 富士川と呼んで人が渡るのも、
 その山からの水が溢れているのである。)

 * 石花海(せのうみ): 貞観6年(864年)の噴火以前に富士山北麓にあった大きな湖。


 日の本の大和の国の
 鎮(しづ)めともいます神かも


 (日の本の大和の国の、
 重鎮としておましますなり、神は。)


 宝ともなれる山かも
 駿河なる不尽の高嶺は
 見れど飽かぬかも


 (宝と言ってもよい山であることよ、
 駿河にある富士の高嶺は。
 見飽きることなど、あろうはずがない。)


 引用と参考: 水垣久さんの「やまとうた

 冗長の感もする歌ですが、いにしえの人々が富士山に抱いていた畏敬の念がよく分かるかと思います。

 さて、御殿場駅前の駐輪場に自転車を預け、午前8時30分発富士サファリパーク経由十里木行きのバスに乗って、愛鷹山へ。
 この日はバスの運行時間が遅れ、実際に御殿場駅を出たのは9時に近い頃。
 バスが来るまでの間、自衛隊板妻駐屯地の隊員さんとお喋り。
 「今日は遅出出勤の日」という三十代半ばぐらいの隊員さん。
 お若いながら、とても如才ない方でした。

 バスは国道469号線を走り、40分ほどを要して終点の十里木に到着。
 途中「愛鷹山登山口」という停留所も。
 いずれ、そこからも登ってみたい。

 バスで巡ってみた十里木は、とても広大で整備の行き届いた高原別荘地であることを再認識。
 「十里木高原」、標高900m~1100メートルにかけて富士山の裾野に広がるこのあたり一帯はそう呼ばれています。
 冬は雪が1メートルぐらい積るかも。

 バスを降りて越前岳への登山口に向かって歩き出すと、「十里木関所址」という古ぼけた小さな四角い石碑が目に入りました。
 傍の立て看板の文字のくすんだ説明書きを読んで、いまバスで通ってきた国道469号線が、かつての街道の一部だったことを知りました。
 古くから、足柄の竹之下から足柄峠を越え、御殿場を通ってこの十里木に至り、富士宮を経て甲斐の国へと至る重要な街道があったということです。
 その古い街道の竹之下から富士宮までの間は、十里木街道と呼ばれていたようです。

 関所の近くには「頼朝の井戸」という何やら興味をそそられる場所も。
 今日は、山を下りたあとに十里木を午後3時発のバスに乗って帰る予定なので、あまり時間がありません。
 史跡?はいずれ改めて訪ねてみることに。

 十里木の越前岳登山口の看板に「熊出没注意」の掲示が!
 クマったことになりました。

 つづきは次回の記事で。



愛鷹山登山道案内 (2017.8.3 十里里高原:静岡県裾野市)



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夕ひぐらし / 夕焼 / 焼酎

2017/08/02 Wed

    夕ひぐらし麓の駅のまだ遠く

         (ゆうひぐらし ふもとのえきのまだとおく)


    拝みしと焦土に伏して夕焼け富士

         (おがみしと しょうどにふしてゆやけふじ)

 追記: 元の句「西日富士焦土に伏して拝みしと」を推敲。(2017.8.3)


    「焼酎」と堂々と言ひ若者ら /むく

         (しょうちゅうとどうどうといい わかものら)



2017.8.2 金時山への次の登山ルート (Google Mapにプロット)


 バースデー記念登山ルートを計画したのですが、あいにく昨日も今日も雨。
 足の疲れもだいぶ取れたので、晴れそうな明日こそ…。
 でも、熊が出そうな道だなぁ。
 一人で登るので、やっぱりサバイバル用のナイフぐらいは用意すべきかも。
 金太郎や大山倍達にはほど遠く、熊に勝てるかどうか…あんまり自信ないですけど。

* * 焼酎 * *

 居酒屋で堂々と「ホッピー!」と言う仲間たち。
 焼酎がだんだんメジャーになってゆくのを見て…世の中変わるぞ!と思った学生時代。
 「下町のナポレオン」(いいちこ)という大分の麦。
 何もなくても全てを持っていると思えたあの頃。



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プロフィール

渡邊むく

Author:渡邊むく
職業:産業技術英語通訳・翻訳者。男性。俳句歴:2000年より。(主な発信地:神奈川県横須賀市、静岡県御殿場市)

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